Anthemサービス終了まであと僅か 大作と期待されたタイトルの栄光と凋落

Anthemの公式画像

 オンラインサービスを提供するライブサービス型のゲームは、いつか必ずサービスが終了する。その時にオフライン版として継続してタイトルをリリース出来るのか、それとも完全に終わりを迎えてしまうのかはそのソフトの構造と販売・開発元次第である。今回はサービス終了を2026年1月12日に控えたタイトル「Anthem」を紹介しよう。期日の近いこの作品のサービス終了のニュースを敢えて「レビュー」というカテゴリで残すのは、このゲームが実質的にアクセス不可能となる為であり、いわゆる「墓標」の様なものだと思って頂きたい。

期待された鳴り物入りのタイトル

 Anthemは、バイオウェアが開発し、エレクトロニック・アーツより2019年2月22日に発売されたオンラインマルチプレイヤーアクションロールプレイングゲームである。こう書くとジャンル分けからは分かりにくい内容と思われるが、同作はSFチックな世界観をベースにしている。主人公は「ジャベリン」と呼ばれるカスタマイズ可能なエクソスーツ(パワードスーツ)を身につけた「フリーランサー」として、居住地の壁の向こうに広がる大自然と、そこで繰り広げられる戦いに身を投じるという作品だ。

 当時では珍しい少人数マルチプレイというタイトルであるが、アクション性が強く、また不意に強敵や悪環境と遭遇する様な「ランダム性」をPVで見せつけており、ユーザーからの期待は非常に高まっていた作品である。

 いざリリースされてみると、ジャベリンを操る際に必要となる飛行操作とその独特の飛翔感、浮遊感は非常に洗練されていた。似たようなSci-Fiタイトルとしては「Warframe」のアークウイングやRFオンラインネクストの飛行機能はあるが、あれと比較するのは論外に出来が良く、DAEMON X MACHINA TITANIC SCIONの似たような操作感と比しても重量感や慣性といった時点でAnthemの飛行システムは驚くほどに出来が良い。きちんとパワードスーツを飛ばしている感があり、じゃじゃ馬的な要素こそあるが、それでもこの飛行システムを超える手触りのゲームを筆者は触った事が無い。

また、ジャベリンそのものもある程度のカスタマイズを施す事が出来る点は魅力として大きい。豊富な武器やシールド、ジャベリンそのものを強化するMODをチョイスでき、自分好みの性能に仕上げる事が出来る。4つのクラスそれぞれに特徴ある操作を行う事が出来るジャベリンの特化性もまた魅力的であった。筆者としてはシールドも展開でき重火器で敵を圧倒できるコロッサスがお気に入りである。火力と重量は正義である。

 さて、こうして高評価を得た同作であるが、ここにおいて一度筆者は詫びねばならない。なぜなら同作の良い所はその辺りの点しか挙げる事が出来ないからだ。

期待を裏切ってしまった凡作へ

 同作を語るうえでまず欠かせないのが、当時の推奨環境であっても非常に長大な時間を要するロード時間だ。ロードに掛かるデータ量をSSD基準で設定したのか分からないという程大量のデータを一度に読み込むように設定されていたのである。環境によってはゲームを開始するのに数十秒どころか数分単位のロードを強いられる事となったのは、当時同作をプレイしたユーザーならば苦い思い出だろう。

 またゲームプレイ時に偶発的に発生するイベントなどの練り込みも甘く、場合によっては発生したクエストがクリア不可能となるバグも存在していた。討伐目標が出現しないことや予期せぬ位置での攻撃不可はもちろん、クエスト目標である取得アイテムの判定消失なども発生する為、折角敵を倒したのにクエストが終わらないということも多々見受けられた。

 TPSとしては肝心の要素である戦闘面においても、敵の属性に合わせてシールドを砕く必要があったり、武器ごとに使い勝手の差が相当にあるためかなりの習熟が必要であったりと爽快感よりはプレイに対する慣れが必要であったのも悪印象を与えてしまっている。

 同作はハックアンドスラッシュの様なシステムも存在し、高レアな武器ほど強力なオプションが付属する。しかし対象となるマルチプレイコンテンツは狭いトンネルの中を進んで硬い敵相手に撃ち合うという進行がザラであり、メインの飛行機能を十分に活かし切れた設定とは到底見なせない出来栄えであった。また同コンテンツが実質的にエンドコンテンツ化しており、ソロプレイに意義を見いだしにくい動線設計である事もプレイヤーの満足度を下げる結果となってしまった。PVの様な「ザッピングシステム」的なマルチプレイ要素は、結果としてゲーム内ではほぼあり得ない描写となったのである。

 極めつけはストーリーラインの演出の稚拙さである。本作の最終ボス「オブザーバー」とは銃撃メインでの戦闘を行うのだが、ボスに対するトドメはなんと戦闘中に挟まれたムービーで決着する。それも、横から突撃してきた障害物に押しつぶされての圧死であり、かつ倒されたかどうかの明確な描写がなされないままに悲鳴をあげて退場するのである。「ベヨネッタ」を出すまでもなく、ムービー的な演出による撃退にせよ、強敵に対して「派手なやられ方」を表現する事は、倒しきったという達成感と安堵感をもたらす要素である。しかし本作はいずれの要素も欠けたままでスタッフロールが始まる。当時プレイしていた身としては、ただ絶句する他無かったのは言うまでもないだろう。

 こうした諸要素は、同作の開発に新規のゲームエンジン「Frostbite」が用いられた事も関係している。同作の開発スタッフに直接の経験者が居ない上に、最終的に同作が目指していた諸要素を満たせないゲームエンジンを使ってゲームを作るしかないという状況で開発が進んでいたのだというから、元々の設計段階で歪みが起きていたと見られても仕方のないものである。

ゲームを残すのか、殺すのか

 オンライン専用タイトルである本作は「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」の対象の可能性があるとしてユーザーからは注目されている。似たようなケースとして「The Crew2」はハイブリッドモードというオフライン版モードを実装することで、ゲーム本体のライブサービス提供が終了しても、まだゲームを遊び続ける事が出来るという改革に踏み切っている。これはThe Crew2の前作であるThe Crewがオンラインサービス終了後に一切遊べなくなったという事で、Stop Killing Gamesという活動が起こる程に猛抗議を受けたからである。そして本作もまた、オンライン専用タイトルであるため、2026年1月12日以降、起動してプレイする事が不可能であると公式から発表されている。

 もちろん同作は期待された作品でありながら、そのポテンシャルを発揮出来ずに凡作となってしまったタイトルだ。だがそれでも「ゲームを買ったユーザー」が起動出来ないという事に対して、多くのゲーマーは明確に反対意見を示している。ライブサービスを主軸としたコンテンツのゲームがその終焉を迎えるとき、果たしてどれだけのユーザーが「思い出」として手元に残してくれるのか。少なくとも1月12日の終了までは、フリーランサー達がAnthemを起動させ続けてくれるだろう。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。