ロボゲーとメカと剣と銃 ロボットゲームの市場と再定義

ガンダムブレイカー4の画像

 ロボットを作品のモチーフにしているゲームは今や珍しくない。フロム・ソフトウェアのアクションゲーム「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON」が大きな話題を呼び、これまでアーマードコアシリーズに興味を持たなかったゲーマーどころかロボゲーやアクションゲームに疎いプレイヤーですら呼び込んだ結果、様々な二次創作コンテンツを生み出す土壌となったのは記憶に新しい話だ。

 だがその一方で「ロボゲー」というジャンルは一般的に見てそう大きな括りではない。アーマードコアⅥは話題になったものの、それに対するフォロワーとなるタイトルが続かずにいる状況だ。ソーシャルゲームとしては「Gジェネレーション エターナル」が市場的に成功を収めつつあるが、ロボゲーとしての括りとしてよりはシミュレーションゲームとして語られる事が多い。本記事ではアクションゲームとしてのロボゲーを軸に、日本と海外とで解釈が分かれる「ロボットに剣は必要か?」という事についてフォーカスをしていきたい。

ロボットゲームに造詣の深い海外ユーザーからの疑問

 ゲームデザイナーとして活動するかたわら、海外メディアForbesへの寄稿なども行うOllie Barder氏のX上の投稿が、昨今注目を集めている。同氏の投稿には『メカが剣を使用する理由について「かっこいいから」という言葉が頻繁に引用されますが、これは多くの海外のメカファンからは強く反論されており、「正当な理由」ではなく「言い訳」として受け取られることが一般的です。なお、私はこの見解には賛同しておりません』とあるのだ。

 同氏は筋金入りのロボットゲームファンであり、アーマードコアシリーズについてはそのほぼすべての作品を網羅する程にコアなプレイヤーである。同氏が言うには、メカ(操縦の必要なロボット)が剣を携帯し攻撃する事は、海外の一般的なメカファンには受け入れがたい要素として考えられているというのである。確かに話題のアーマードコアⅥにおいても、例えばアーマードコア4やfAといったタイトルに見られる引き撃ち戦術のような射撃戦をベースとしているものではなく、シングルプレイにおける動線設計は「隙を見つけて相手に接近し攻撃を見舞う」という、近接戦闘上等の調整がなされている。また武装もレーザーブレードや散布式爆薬、レーザーランスにプラズマヨーヨーといった変わり種も入れればだいぶ近接武器が多い。何も持っていない場合は素手で殴る動作もある。いわば総合格闘技の様な乱闘ぶりである。

 一方で海外で語られるゲームとしての定番は「バトルテック(BattleTech)」や「メックウォーリア(MechWarrior)」、最近ではソーシャルゲームの「War Robots」などもそこに加わる事になる。こういったゲームでは、確かにごく一部の足の早い機体がボディを相手に接触させるといった事は戦術として見られる。だが大体の場合はTPSあるいはFPSとしての射撃戦が展開されるシステムであり、機体の挙動は比較的低速であり、操作感としては非常にもっさりとしている。メックウォーリアシリーズでは一部タイトルやコンテンツで、限定された状況下では手持ちの近接武器を装備し、それが機能するルールや戦場といったものが用意されている。メックとしては「ハチェットマン」が非常に有名であるが、逆に言えば同機体の様な使い捨て上等かつローコストで市街戦を済ませる極致として近接武器が通用するのであり、そういうシチュエーションでもない限りは武装スロットを無駄に食いつぶす要素としてしか見られていない。

 つまるところ、例えばガンダム系タイトルの様に、ロボットが高速機動戦闘を行う上では近接格闘武器というのは選択肢に入るが、重機としての立ち位置でロボットを考えるとそもそも機動力が乏しいのに近接戦闘を行えるシチュエーション自体に無理があるのではないか?という所であろう。

剣と銃、刀と伝統芸能と鎧の終焉

 ここでまず日本における「ロボット」の立ち位置を確認しておこう。日本のアニメーション作品や特撮作品で親しまれているロボットは、基本的に主人公勢力にとっての「切り札」として機能する。そういったロボットはアイコニックな装飾と必殺の武装、大体の所は「剣」を携える。もちろん敵側勢力も巨大化、あるいは必殺の兵器を繰り出すのがロボットアニメや戦隊ヒーロー物のお約束だ。そしてお互いの交戦を経て、主人公側の必殺の一撃として剣戟一閃、相手が爆散して勝負がつくというものである。

 これは遡れば展開としての様式美は時代劇における悪役への成敗、さらに遡って歌舞伎における刀と立ち回りの関係性に帰着する。ざっくりと言ってしまえば、刀などの近接武装は「盛り上がってきた事を示すシンボル」でもあり、悪役や敵を対峙する「シメ」に向けての符丁である。また我が国では戦国時代こそ織田信長や雑賀孫市といった傑物のお陰で銃が有名になったものの、一般的な層が銃を手に入れるようになるまでにはそこから300年近く先、幕末前後まで時間を飛ばさねばならない。日本における神器として「剣」がフィーチャーされており、江戸時代の武装といえば総じて「刀」であり、近代においても突撃戦術の要として軍装における「刀」は重要視されていた。菊と刀や五輪の書を紐解くまでもなく、へし切長谷部や正宗、海外では「ムラサマブレード」としてウィザードリィで扱われた「村正」などは言わずもがなの立ち位置である。

 一方で欧州において剣と鎧は早々に過去の物と化してしまっていた。1337年に開戦した百年戦争は、重装鎧による突撃戦術を阻む歩兵と弓兵の合わせ技で見事に重装騎士の時代を終わらせてしまった。また同戦争では大砲の活用が積極的に行われ、歩兵の白兵戦以上に遠距離からの制圧戦は戦争の趨勢を握ったのだ。ここにおいて「剣」ではなく弓、そしてその後に続く銃が社会において武装として認知をされていったのである。

 では海外におけるメカの立ち位置はどこにあるのかといえば、第一次世界大戦以降に出てきた「戦車」の工業的解釈品である。相応の理由付けをもって移動する、低速ながらも威圧的なフォルムと十分な投射火力を備えた「規格生産される動く武装車両」という解釈こそが、海外におけるメカなのである。そしてメカが銃を装備するのは、海外における武装に対する文脈が銃であるが故の話である。規格化された工業製品として既に人を超えるサイズのメカを実現できる技術力の世界には、コナン・ザ・グレートやヒーマンといった「特別な剣使い」の立ち位置はなかったのである。物量で押してしまえる世界なのだ。

 ロボゲーという括りからは少々外れるが、映画「STARWARS」はこの論を裏付けるに十分な描写がなされている。象徴的な武装であるライトセーバーは、ジェダイ謹製の武装ながら工業的な作り方が浸透しているアイテムであり、作中においてはブラスター(光線銃)が一般的過ぎるためわざわざ使う人物はごく少数に留まっているという理由付けがなされている。またダース・ベイダーが操縦する戦闘機のTIEファイターは、特殊な「TIEアドバンストx1」という機体であるが、これは厳密には大量生産に向かない高級機であり、また指揮官機としてアイコニックな装飾やカラーリングがなされていない。これも海外においてはそういった装飾というものがあまり重要視されていないという視点の裏付けとなる。

 長くなったが、以上の理由により海外ではメカ同士の撃ち合いというゲームスタイルが好まれるものであり、日本においてはロボット同士のアクションとしての剣戟が好まれるという明確な差が生まれているのである。もちろん仔細を語ればまだまだ書けそうだが、長くなりすぎるのも飽きてしまうからこのあたりでシメに入ろう。

ロボットゲームの市場

 海外において最もヒットしたロボゲーは「タイタンフォール2」だと言われ、これは700万本の売上を誇る。一方でアーマードコアⅥも売上本数は少なく見積もって370万本だ。タイタンフォール2はロボゲーというには人間同士のシューティング要素が強いため微妙な立ち位置ではあるが、それでもフロントミッションシリーズが受ける土壌があり、そしてまたスーパーロボット大戦シリーズも好評を博している。メックウォーリアでは5のスピンオフタイトルであるClansが出ているので、パブリッシャーはまだまだ同シリーズを手放す気はないようだ。市場規模は大作RPGなどと比べて控えめではあるが、それでも確固たる需要が存在する事は間違いない。

 発売はまだまだ先だがHeavy Gear3というロボゲーシリーズ次回作や、Ironwing Valiant: Record of Astera、スクランブルヴァイス、オメガフェネクス、VARIAVLE ARMS FRONTIER -暁の皇女と忘れさられた惑星-といった期待のインディーゲームも目白押しである。今後もロボゲー界隈は設定に対するうんちくを垂れ流しながら、新たな新天地が開かれるのを心待ちにしているのだろう。

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。