日本のゲームメーカーとして知られている任天堂。同社の発展には様々なゲームソフトの影響力もあり、そしてそれはひとえにソフトを作り出すクリエイターによって賄われていた。2025年夏、ある1人のクリエイターが去っていたという事実が最近話題となりはじめている。
当該人物は「紺野秀樹」氏。スーパーマリオシリーズ及びマリオカートシリーズの製作者の一人であり、マリオカートシリーズ生みの親として知られる人物。2025年7月に任天堂を退職していたが、特にゲーマーの多いSNSであるX上では2026年1月後半より海外ファンが同氏の進退について話題にし始めている。
Hideki Konno retired from Nintendo after almost 40 years.
— Stealth (@Stealth40k) January 24, 2026
He worked on Super Mario Bros. 2/3/World, most Mario Kart games, Luigi's Mansion, Yoshi's Island, Nintendogs and a lot more.
He was also the lead producer of the 3DS hardware.https://t.co/hnYL2xqmGe pic.twitter.com/bbbBFQWDhA
任天堂を支えた立役者
紺野氏が最初に携わったソフトは「夢工場ドキドキパニック」という作品だ。当時新しい技術であったファミリーコンピュータ ディスクシステム用ソフトとして開発された同作だが、これが後に海外向けにキャラクターをマリオなどに差し替えてリリースされた「Super Mario Bros.2」となり、日本に逆輸入され「スーパーマリオUSA」として親しまれる事になる。同氏はアシスタントディレクターとして作品を手掛け、その後スーパーマリオブラザーズ3のアシスタントディレクターやスーパーマリオワールドのマップディレクター、任天堂初の都市経営シミュレーションゲーム「シムシティ」のディレクターなどを勤め上げる。
ここまででもファミリーコンピュータやスーパーファミコン向けゲームに果たした役目は非常に大きいが、同氏の経歴を決定的としたエポックメイキングな作品が「スーパーマリオカート」のディレクター職だ。同じ任天堂在籍のクリエイターである杉山直氏と共同で送り出したこのタイトルは、スーパーファミコン向けのレースゲームとして当時出ていた「F-ZERO」よりも低速かつ扱いやすい操作性となっており、現在までシリーズが継続する息の長い作品として愛され続けている。また「スーパーマリオ ヨッシーアイランド」「ヨッシーストーリー」の様なスピンオフかつハイクオリティなタイトルを手掛けたり、任天堂の一時期の看板作品となった「Nintendogs」にも携わっている。任天堂のソフトを語るうえでなくてはならない人であった。
そんな同氏が退職したことを、任天堂に在籍していたアートディレクターの今村孝矢氏も惜しむ声を贈っている。今村氏はスターフォックスシリーズなど複数のメジャータイトルに関わるアートディレクターであり、紺野氏と共に最前線に立ってソフトに携わっていた人物の1人だ。
紺野さんの退職が話題になり始めた‥
— 今村孝矢 / Takaya Imamura (@ima_1966) January 24, 2026
時代を作った人たちが任天堂から離れていく‥。 https://t.co/5YMnx5w5vv
任天堂を去ったもう1人の「ボス」
昨年任天堂を去った有名人は他にもいる。ダグ・スペンサー・バウザー(Doug Spencer Bowser)氏がそれに当たる人物であり、その苗字が偶然にもマリオシリーズのキャラクター「クッパ」の英語圏の名称である「バウザー」と同じであった事から「クッパ社長」などの愛称で親しまれた人物であった。同氏はNintendo of Americaという任天堂北米法人に籍を置き、マーケティング担当として辣腕を振るっていた人物である。2019年には同法人の社長にまで登りつめているあたり、その実力は疑うまでもないものである。そんな同氏も2025年12月31日に任天堂を退社。任天堂において44年間業務を勤め上げた事に感謝の意を示している。
Today, I announced my plan to retire from Nintendo, effective December 31, 2025. Nintendo has been an integral part of my life for 44 years, starting with Donkey Kong Arcade as a kid in college. It has been an honor to contribute to this incredible company and bring our beloved… pic.twitter.com/nIzCnHjQ9E
— Doug Bowser (@thetruebowser) September 25, 2025
もちろん当時最前線で走っていた綺羅星のようなクリエイターもマーケターも、全てのスタッフが「後を託す」年齢となってしまっている状況はいかんともしがたい。そのため世代交代は必要ではあるが、かつての黄金期の様な勢いが現状の任天堂にはあるかというと、若干風向きが厳しい状況にある。
ハードウェア高騰とSwitch2の販売不振
年初1万円を超えていた任天堂の株価は、執筆時点の2月4日時点でで8,973円とかなり値を下げている。2025年にNintendo Switch2がリリースされたものの、その販売数量が制限される状況に消費者からは戸惑いの声があがっている状況であった。そして最近のメモリやSSDの急な価格高騰を受けて、販売価格に占める製造コストがどれだけ回収できるのか不安視する動きが出ているのである。旧型モデルとなったSwitchとは違い、中のパーツも値段相応どころかお得感が出る程にパワーアップを遂げていたSwitch2。それだけに調達コストの増加は頭の痛い話となっている。こういった世情は同社の動きを大きく縛りつけていると言っても過言ではないだろう。
またソフト面においても新作が生まれにくい状況が続いており、Switch2独自のソフトというよりは「他ハードで遊べるソフトの調整版、移植版」がリリースされ続けている状況だ。マルチプラットフォームで遊べるゲームが増えるのは良いことだが、それが増え続けた結果、任天堂の独自色やSwitch2ならではといった独創性を持つタイトルが出にくくなっている点は考慮すべきだろう。
いずれにせよ、任天堂も昨今のハードウェア市場や人材の確保と無縁ではいられない。どれだけ良い後継者を見つけ、ゲームやゲーム機を供給できる体制を整えていくか、その手腕が試されている。
