Clair Obscur: Expedition 33がGame Of The Year剥奪に 生成AI利用の是非と今後のゲームの作り方

The Game Award キーアート

 昨年開催されたThe Indie Game Awardsでは、Clair Obscur: Expedition 33が驚異の9冠を成し遂げた事で大きな話題を攫った。しかしこの冠はいささか不正確であったようである。The Indie Game Awardsを運営する米Six One Indieは2025年12月22日までのうち、Clair Obscur: Expedition 33に与えた賞を剥奪したのである。

 同作は同月18日(現地時間)の表彰式で最優秀賞など2つの賞を贈ったものの、これらは現在別タイトルの受賞となっている。GOTY受賞者はローグライク風味の探索ホラー『Blue Prince』に、Debut Game受賞者はサバイバルホラー作品の『Sorry We’re Closed』へと変更済みだ。何故このような事態が発生したのか、昨年末に吹き荒れた嵐を追いかけてみよう。

生成AIの利用を禁止するThe Indie Game Awardsの規約

 本件についてThe Indie Game Awards側のアナウンスにどう書いてあるのかを見てみる事にする。当該ページの資格と推薦の為の説明を行う項目に、原文では以下の様な記載が存在する。

“Games developed using generative AI, that have disclosed the use of generative AI, or that include assets created using generative AI in their launch builds are strictly ineligible for nomination. Generative AI includes but is not limited to art (concept, key art, textures, models, etc.), performances, writing, music, and any medium that can be achieved with human artists, writers, or performers.”

(対訳:生成AIを使用して開発されたゲーム、生成AIの使用を公表しているゲーム、またはローンチビルドに生成AIで作成されたアセットを含むゲームは、ノミネート対象外となります。生成AIには、アート(コンセプトアート、キーアート、テクスチャ、モデルなど)、パフォーマンス、執筆、音楽、および人間のアーティスト、作家、パフォーマーによって達成可能なあらゆる媒体が含まれますが、これらに限定されません。)

 続いて今回Clair Obscur: Expedition 33が受賞すると発表されたGame Of The Year2025についての項目からも抜粋を行う。原文と対訳は以下の通りだ。

“The Indie Game Awards have a hard stance on the use of gen AI throughout the nomination process and during the ceremony itself. When it was submitted for consideration, a representative of Sandfall Interactive agreed that no gen AI was used in the development of Clair Obscur: Expedition 33. In light of a resurfaced interview with Sandfall Interactive confirming the use of gen AI art in production being brought to our attention on the day of the Indie Game Awards 2025 premiere, this does disqualify Clair Obscur: Expedition 33 from its nomination. While the assets in question were patched out and it is a wonderful game, it does go against the regulations we have in place. As a result, the IGAs nomination committee has agreed to officially retract both the Debut Game and Game of the Year awards.”

(対訳:The Indie Game Awardsは、ノミネート過程および授賞式における生成AIの使用について厳しい姿勢を示します。審査対象として提出された際、Sandfall Interactiveの代表者は『Clair Obscur: Expedition 33』の開発に生成AIが一切使用されていないことを認めました。しかし、2025年インディーゲームアワード初日当日に、制作過程で生成AIアートが使用されていたことを確認するSandfall Interactiveのインタビューが再浮上したため、本作品はノミネート資格を失うこととなりました。問題の素材は修正済みであり、素晴らしいゲームであることに変わりはありませんが、当アワードの規定に反する行為です。この結果を受け、IGAノミネート委員会は新人賞および年間最優秀ゲーム賞の受賞を正式に取り消すことを決定しました。)

 つまるところ、Clair Obscur: Expedition 33の過去に使用していたデータの中で生成AIを使用したコンテンツが見つかっており、かつ今回の受賞時に制作側が「生成AIを一切使っていない」という説明を行っていた事が、本件の主な争点となっていたのだ。これについて過去に生成AIを利用している可能性があるテクスチャを使用しているという報告がX上でポストされており、明確にテクスチャの差し替えが行われた事が示されている。

 いずれにせよ、本件は明確に「ゲームを作るという行為と、AIの関与」に対して明確な線引が行われたモデルケースとなった。そしてそれは同時に、どこまでを生成AIに委ねて良いのかという新たな問題も生み出す事となっている。本件はゲーム内に実装されるコンテンツという形で生成AIの利用が可視化されたケースだが、「アイデア出し」の段階で既に生成AIを利用する事がNGであれば、そういった要素を事前にチェックする体制が必要となってくる。もちろんそこまで行ってしまえば、いわば現代における「魔女狩り」の様なものになってしまうだろう。

 とはいえ生成AIについては、『Clair Obscur: Expedition 33』マエル役や『Baldur’s Gate 3』シャドウハート役で知られる俳優ジェニファー・イングリッシュ氏が明確にNOを突きつけたインタビューが公開されている。Baldur’s Gate 3の開発元はCEOが生成AI利用について積極的な姿勢を見せた事から批判を浴びており、そういった点からも「作る側」と「演じる側」、「遊ぶ側」に明確な温度感の差が生まれてしまっているのは否めない。

 今後生成AIの利用はどこまで拡大していくのか、そしてゲーム開発にどれだけの枷を嵌めてしまうのか。その立ち位置の策定を早急に行う必要が出てくるのは否めないだろう。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。