バーチャルマーケット2025 Winter開幕 小規模化進むも相変わらずの盛況

バーチャルマーケット2025 Winterの告知画像

 株式会社HIKKYは、2025年12月6日(土)〜21日(日)の期間、ソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」上において展示会形式のメタバースイベント「バーチャルマーケット2025 Winter」(通称:Vket)を開催中である。今回は本イベントの開催に先駆けて、12月3日(水)〜5日(金)の3日間、メディア向けの先行体験・取材イベントを実施するとの報道も出ており、現在絶賛開催中の同イベントには多くのユーザーが押し寄せている。

 本記事では現在開催中の当イベントをさらいつつ、その楽しみ方についてフィーチャーしていく事にしよう。

VRChatとバーチャルマーケット

 VRChatは2014年よりサービスがスタート、2017年よりSteamにて早期アクセスが行われているソーシャルVRプラットフォームである。昨今のソフトウェアで言うところの「Cluster」や「Reality」に近いものであり、最近では多くのサービスがリリースされている形態である「メタバース」に属するソフトウェアとして大規模、かつ古株のソフトにあたる。先発として大手タイトルとして報道も行われたリンデン・ラボ運営の「Second Life」と比較される事もあるが、あちらがテキストチャットベースかつWASD操作の俯瞰視点をメインとするのに対し、こちらはVRHMDなどのトラッキングを用いた擬似的な身体コミュニケーションも取れる事を特徴とする音声ベースという点で大きく異なっている。最も、最近テキストチャットも簡易ながら実装されており、これまで音声中心であったコミュニケーション形態は大きく変わりつつある。

 VRChatで活動するにはアバターという身体を構成するデータが用いられ、アバターを用いてプレイヤーが交流するワールドを移動するというスタイルとなる。現実世界でいうところではアバターが衣服、ワールドが家や建物、空間といった認識で問題ない。日本で知名度が上がりつつあったなかで、著作権的にも問題のない「ユーザーが著作し、改変なども問題なく可能であるクリーンな製品」を求める声が生まれ、それをより集めて展示会形式で発表するというイベントが開催される事となった。それが2018年に開催された「バーチャルマーケット(Vket)」である。

 Vketは第2回以降企業からの協賛がつくことになり、第4回からは「パラリアル」と称して、現実世界に近しいオブジェクトやギミックを設置したワールドを、一定期間企業展示用会場として公開するという形式を取り始めた。派生サービスとして株式会社HIKKYが手掛けている同様のサービス「Vket Cloud」には以前開催された「パラリアル沖縄」のデータが用いられたワールドが公開されている。興味があれば参考例の一つとして訪れてみるのも良いだろう。

 ただし今回のワールドに関しては、これまで「実在の建物や景観の要素をある程度落とし込んでいる」というパラリアル系ワールドの法則からは大きく外れたレイアウトとなっている。今回は今までの法則とは違うタイプの新しい展示となりそうだ。

パラリアル新宿とパラリアルシンガポール

 今回は東京都の新宿をイメージした「パラリアル新宿」と、シンガポールの首都をモチーフにした「パラリアルシンガポール」が企業展示会場の舞台となる。先述したように、これまでの企業展示会場では現実世界を拡張した様な展示が目を引いていたが、今回の展示会場は「エッセンス」を小分けにしたような、回りやすく見やすい配置となっている。

 パラリアル新宿は大きく5つのエリアに分かれている。それぞれ「新宿ウェスト」「ゴールデン・カブキ超サイド」「シン御苑前」「トーキョー都超前広場」「新宿サザンペタス」と区分けされており、区画順に専用のモノレールに乗車し移動する事が出来るようになっている。各エリアでは企業がそれぞれの製品や要素を様々な方法で宣伝しており、特に今回はスズキ株式会社の「セニアカー」が大々的に推されているのか、別会場であるパラリアルシンガポールでも乗ることが可能な仕様となっている。

 一方でパラリアルシンガポールは合計3エリアと非常に控えめな構成だ。これまでの企業展示の中で、パラリアル化して以降最小かと思える移動可能面積だ。だがしかし世界最高峰の統合型リゾート施設「マリーナベイ・サンズ」をモチーフとした遠景やいたるところに見えるマーライオンをモデルとした景観、全体を通して水の透明感を重視してデザインされたワールドは、出展企業の高級感を後押ししている。

 なお今回もサントリーとアサヒが出展を果たしており、ここ最近のVketではほぼ毎回出展を果たしている常連ブースといっても過言ではない。馴染みのある企業の継続した出展は、Vketの知名度向上に一役買っている状況だ。

 協賛企業が入れ替わりながらも開催を続けるバーチャルマーケット。今冬そして来夏に向けて、今から未来を先取りしてみるのも悪くないだろう

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。