UbisoftがカナダのスタジオUbi Halifaxを閉鎖 コストカットの裏で労働組合潰しの疑義が広がる

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 日本時間の2026年1月8日未明、UbisoftはIGNなどの複数のメディア宛てに声明を送る形で発表を行った。カナダに存在する同グループのスタジオ、Ubi Halifaxを閉鎖したとの事だ。同社はIGN USに対し、71名が影響を受けたことを認め、今回の閉鎖は同社全体で「事業合理化、能率改善、経費削減」を目指す2年間におよぶ取り組みの一環であることを明らかにした。また、「この移行期間中、包括的な解雇手当や付加的なキャリア支援といったリソースが投入される。影響を受けるすべてのチームメンバーをサポートするつもりである」と同社は語っている。

 確かに昨今はロックスター・ゲームズをはじめ、ゲーム開発企業内のレイオフが相次いでいる状況である。そのためこの閉鎖の報道自体は「残念だがありふれたもの」という第一印象を抱かれがちである。しかしこのスタジオ閉鎖の直前に、同スタジオが労働組合を結成していたという事実は、この閉鎖劇が一種の悪意を持ったものではないかという疑念を抱かせるに十分なものであった。本記事では同スタジオの過去の動きも含め、今回の流れを追いかけてみよう。

Ubisoftと付き合いの長いUbi Halifaxと労働組合

 元々Ubi HalifaxはLongtail Studiosというゲーム開発スタジオを前身としている。同スタジオは2003年にニューヨークにて設立された後、ハリファックスやケベックにも派生スタジオが拡大。その後ハリファックスのスタジオが2015年にUbisoftに買収され、以後は『アサシン クリード リベリオン』や『レインボーシックス モバイル』といったモバイルゲーム専門のスタジオとして動いていた。

 ところでLongtail Studiosのケベックスタジオでは2008年から2009年に組合結成運動が行われていた。この取り組みは経済状況を理由とする大規模な人員削減など、経営陣からのあからさまな組合潰しによって、最終的に失敗に終わったという。Longtail Studiosのケベックスタジオは、その後ハリファックスのスタジオ同様にユービーアイソフトに吸収されている。

 そして3週間前の12月中旬、ハリファックススタジオの従業員61名が、カナダにおけるCWA(米国通信労働組合)の一部であるGame & Media Workers Guild of Canadaとの組合結成に賛成票を投じている。同組合は、従業員が組合結成の意思を明らかにした半年後、プロデューサー、プログラマー、デザイナー、アーティスト、リサーチ担当、テスト担当から成る従業員の74%が賛成票を投じ、正式に認定されたものであるという。CTV Newsが報じた所によると、北米で初めてのユービーアイソフトの労働組合が設立された事になる。

 だが今回の閉鎖は労働組合結成直後のタイミングで実行に移された。Ubisoft側は「特にそういった要素とは関係なく、閉鎖は事前に決まっていた」というが、その動きの奇妙な性急さは、たとえ関連があろうとなかろうと、同社の労働組合潰しではないかとゲーマーたちの目に映る事になった。

業績改善の為の再編はうまくいくのか

 先日Ubisoftは決算発表を延期するという異例の措置をとっていたが、これはIFRS会計基準での見直し処理が発生しており、その対応のため延期せざるを得なかったとの事である。財務状況については問題がなく、また新規スタジオであるVantage Studioへのテンセントの戦略的出資が完了したとも発表を行っている。直近ではAmazon Gamesから新規タイトルとして「March of Giants」を買い付けており、同社のMOBA系新規IPとしてプレイヤーの注目を集めようと努力している状況だ。

 とはいえ同社を取り巻く状況は宜しくない。『アサシン クリード リベリオン』の収益減少が今回のスタジオ閉鎖の一因となっており、同作も今回の決定の一環として運営が縮小される事になる。同社は大規模な削減を実施しており、ここ数年で複数回にわたって従業員の一時解雇を行った。新機軸のIPとして見込んでいた『エックスディファイアント』のサービスも終了する事になってしまった。その煽りを受けて大阪およびサンフランシスコスタジオを閉鎖され、『スター・ウォーズ 無法者たち』などの売り上げが伸び悩み収益が減少する中で『ディビジョン ハートランド』を含む複数のプロジェクトを中止している。

 今回のハリファックススタジオ閉鎖は、元々Ubisoftのモバイル軸として機能していたスタジオを閉じるというだけあり、今後のスマートフォンでのブランド展開に対して消極的な姿勢である事を示しているとも受け取られかねない。確かに良質なコンテンツがしのぎを削るレッドオーシャンとして見る動きもあるため、そういった点で見るならば「不得意な所を切り捨てて、得意とするフィールドにのみリソースを割く」というのは賢い選択だ。一刻も早く暗雲を取り払って、同社のイメージ回復に務める事が最優先となるだろう。

1995年神戸生まれ。ゲーム記事エディター。国内メディアのゲーム・エンタメ記事編集者として5年勤務後、フリーライターとして複数のメディアで活躍。ビデオゲームの専門レビューや特集を中心にお届け。