Ubisoftは現地パリの時刻で1月21日、大規模な組織再編とそれに伴う開発体制の変更、スタジオの閉鎖や複数タイトルの開発中止を盛り込んだプレスリリースを発表した。「創造的リーダーシップと持続可能な成長を取り戻すための組織・運営・ポートフォリオの大規模な再構築」と銘打たれた今回の発表を深堀りすると共に、開発中止が決まった「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」リメイク版も含め、Ubisoftの動向を追っていく事にしよう。
クリエイティブハウス制は吉と出るか凶と出るか
組織再編で注目されるのが、同社の制作体制の刷新だ。これまで多くのスタジオを抱え、それぞれのスタジオ同士が連携し合う事で大規模タイトルの製作を行っていた同社。今回同社が語ったのは「制作と出版を統合した事業部門であるクリエイティブハウス」というシステムだ。プレスリリースによれば「各クリエイティブハウスは明確なジャンルとブランドを軸に構築され、専任のリーダーシップチームが統括する完全な責任体制と財務的自律性を備えています」との事である。これまでスタジオを横断する形でタイトルを開発していたが、今後は「タイトル毎に必要な人材が割り当てられる」というタイトル主導型の開発体制へとシフトしていくようだ。今回発表された構造は下図の通り。

プレスリリース内の説明による各クリエイティブハウスの役割を列記しよう。CH1(ヴァンテージ・スタジオ)は、ユービーアイソフトの最大かつ確立されたフランチャイズを拡大・拡張し、年間10億ドル規模のブランドへと成長させることに注力する。「アサシン クリード」「ファークライ」「レインボーシックス」といったメガヒット級タイトルを手掛ける主力スタジオだ。
CH2は競争型および協力型シューティング体験向けであり、「ディビジョン」「ゴーストリコン」「スプリンターセル」といったシューター系を担当。CH3はライブ系コンテンツを中心に担当する部署となる。「フォーオナー」「ザ・クルー」「ライダーズ・リパブリック」「ブロウルハラ」などがここの管轄だ。CH4は没入型ファンタジー世界と物語主導型コンテンツに割り振られている。「アノ」「マイト&マジック」「プリンス・オブ・ペルシャ」などがここに当たる。CH5はカジュアルゲームと家族向けゲーム分野、いわゆるより軽度なモバイル、コンシューマ向けタイトルが担当領域となる。これらクリエイティブハウスが、ブランド展開に対する責任を負う事になるのだという。Ubisoft HQ(本社)は各クリエイティブハウスの支援を行うバックオフィスとしての機能を持たせているとの事だ。
他方でこのプレスリリース内で注目される内容としては、先程挙げられたCH4の担当ブランド「プリンス・オブ・ペルシャ」において、新作となるべき「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」のリメイク版の開発中止が発表された事である。3つの新規IPを含む未発表タイトル4作品、およびモバイル向けタイトル1作品の合計6作品もの開発が中止となり、加えて7つの別作品が開発延期となっている状況だとも記されている。これについてはプリンス・オブ・ペルシャのブランドアカウントが1月22日に発表を行った。「市場からの完全撤退ではない」と強調されてはいるものの、ユーザーからは落胆の声が届いている状況だ。
— Prince of Persia™ (@princeofpersia) January 21, 2026
さらにスタジオの閉鎖も案内されている。今月初めのハリファックス・モバイルスタジオの閉鎖は既に報じられているが、今回新たにストックホルムスタジオの閉鎖が発表。ならびに他のスタジオであるアブダビ、レッドリンクス、マッシブ・エンターテインメントといった各スタジオにおいても人員の再編が行われる。なおストックホルムスタジオとマッシブ・エンターテインメントについてはCH2担当の「ディビジョン」の開発元であり、1月16日にはディビジョンシリーズのプロデューサーであるJulian Gerighty氏がマッシブ・エンターテインメントを去った事をX上にて報告している。
Once an Agent, always an Agent. We’re thankful for everything you gave this universe. You’ll always be part of it. Good luck at @EA_DICE, @jgerighty 🧡 pic.twitter.com/QlzuV4XtVV
— Massive Entertainment – A Ubisoft Studio 🎮 (@UbiMassive) January 16, 2026
プリンス・オブ・ペルシャとアサシンクリードと換骨奪胎
今回開発中止となった「時間の砂」を含むプリンス・オブ・ペルシャシリーズは、1989年に第1作が発売され、主人公プリンスが登ったり走ったりする人間味溢れるアクションを精緻に描いたロトスコープによる製作や、ギリギリの所で足場を飛び越えたり罠を回避する絶妙なギミックの配置、当時では珍しい中東文化をベースとしたファンタジーといった側面が非常に高い評価を得た。これは今回期待されていた2003年発売の「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」も同様である。こちらはPS2のハード性能を活かし3Dアクション化を果たしたタイトルだ。シリーズを通した軽快さと快適さはそのままに、戦闘やアクションを大きくブラッシュアップさせた意欲作として高評価を受けた。
そしてここまで見てきて「中東を舞台にする」「アクション要素が強い」「ギミックを活かした行動を取る」という要素にピンときた読者の方は鋭い感覚をお持ちだ。この後PS3とXbox360向けに制作された「時間の砂」の続編として、プリンスの側近を主役とした「プリンス・オブ・ペルシャ:アサシン」というタイトルが開発される。ここに現実的な要素等を加えた結果、独自のIPが生まれる事になった。そう、同社の誇る人気タイトル「アサシンクリード」の誕生に繋がったのである。

だがしかし、今回プリンス・オブ・ペルシャの新作開発は凍結の憂き目を見た。またアサシンクリードシリーズにおいても、最新作の「アサシンクリード シャドウズ」はSteam上での販売本数だけ見ると、過去作であるアサシンクリード オデッセイやアサシンクリード オリジンズに比べると数倍の差が付いている。加えてオデッセイとシャドウズは、ほぼピーク時のプレイヤー人数が近しいという状況であり、シャドウズは新作でありながらユーザーを惹きつけきれていない事が浮き彫りとなっている。
今回の組織再編で同社の今後のゲーム開発状況やクオリティはどの様に変化するのか。混ぜれば良いというエックスディファイアントの轍を踏む事だけは避けるべきかもしれない。
