Nintendo Switch2版The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Editionが突如リリース ただし現状は最適化不足か

Skyrim AE版イメージ画像

 大作RPGの発表などは大々的に告知され、ユーザーの期待を煽ってから情報が解禁される事が多かったが、昨今では急に発表・リリースを行うというサブマリン的手法が流行っているのかもしれない。

 ベセスダ・ゲームスタジオは2025年12月10日、Nintendo Switch2向けのソフトウェアとして、RPG作品「The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Edition(以下、Skyrim AE)」をマイニンテンドーストアで発表した。本作は既にリリースされているNintendo Switch版Skyrim AEの更新版タイトルとしての位置付けとなっている。今回はそのSkyrim AEについてその周りの事情も含め追いかけてみよう。

The Elder Scrolls V: Skyrim Anniversary Editionについて

 元々の作品であるSkyrimは、2011年11月11日に英語版がPC向けに発売されたRPG作品だ。The Elder Scrolls(TES)シリーズの5作目であり、前作The Elder Scrolls Ⅳ:OblivionがPC向けとコンシューマ向けにそれぞれ発表されて以降、徐々にファンを拡大していた事もあって制作発表時から相応に期待されていた作品となる。本作のリリース後にはPlaystation3版とXbox版もリリースされ、その後Steamでもダウンロード可能なタイトルとして登録されると2011年の年末、2012年の年始からしばらくは話題をかっさらい続ける程に人気となっていった。本作でTES作品に入った人やベセスダ・ソフトワークスのゲームに触れた人も多く、同パブリッシャーが出したFalloutシリーズの続編Fallout4の購入の後押しに繋がるなど、市場の活性化にも大きく貢献を果たした。本作でオープンワールドゲームの門を叩いたプレイヤーも多く見られ、これ以降オープンワールドゲームという言葉がシステム的な意味合いからジャンルを表すワードへと変異していく事にも繋がっている。

 さてそんなSkyrimであるが、ベースがPC版という事もありハードウェアの進化についていくため大々的なアップデートを行う必要に迫られた。Skyrim本体は32bitのOS対応のゲームであるが、時代が進み64bitOS対応のゲームが増えた事で本体を丸ごとアップデート、最適化を行った「The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition」が2016年10月28日にリリース。PS4やXbox Oneにも後々リリースされる事になり、コンシューマ向けタイトルとしては限定的ながらMOD(非公式の拡張プログラム)の利用が行えるなどゲームそのものの枠組みが大きく拡張。PC向けとしてもゲームの安定性が大きく上がり、ユーザーが長く親しめるタイトルとして不動の人気を確たるものにした。

 ここでようやくSkyrim AEの話題に入る。更に時代が進み、ベセスダ・ソフトワークスが公式でCreation Clubという自社監修のMODフォーラムを立ち上げた事で、MODの認知、導入が大きく進んだ。その後「Creation ClubのMODや公式のDLCをまとめた、お得かつ安定した決定版」としてリリースされたのがSkyrim AEAEである。Creation Club由来のMODが多数追加要素として導入され、よりボリュームアップした内容が特徴だ。Nintendo Switchにおいては初版のSkyrim以降、SE版のリリースやDLCコンテンツのリリースが行われていなかったが、AEの発売でようやくSwitchユーザーもDLCコンテンツを遊ぶ事が出来るようになったのは大きい。

 とはいえ大作タイトルであるが故に最適化が必要となり、ハードウェアの制約も大きく受けるのがNintendo Switch版である。ホグワーツ・レガシーの移植程の大改修は必要でなかったにせよ、解像度は720pまで下げられ、グラフィックについてはPC版で言うところの「低」設定まで落とさなければいけない状況であった。そのためどちらかといえば「携帯機で最新のSkyrimが遊べる」という需要を満たす方に繋がったと見るべきである。

最適化不足の問題と技術力に対する不安

 今回リリースされたSwitch2版のSkyrim AEであるが、解像度は1080pまで引き上げられ、グラフィックも「高」設定レベルにまで引き上げられている。ライティングについても改善が施されており、よりリアルなSkyrimを楽しむ事が可能となっている。

 ただし、より正確には「可能となっているはずだった。」という但し書きが入る。

 どういう事かというと、本作のフレームレート(滑らかさ)はSwitch版では30に固定されており、少々カクカクした描写となっている。一般的にフレームレートは60であればある程度滑らかな描写であると言える。これが次世代ハードで改善されるかと思いきや、Switch2版でもフレームレートは30で固定されているままであった。また、一部のユーザーは本作について0.2秒程の入力遅延が発生しているという検証動画を上げている。ワンテンポ遅れて操作が反映されるという状況では、到底快適なプレイングには程遠い。

 そしてここで対抗馬として提示されたタイトルが、2020年にCD PROJEKT REDから発表された「Cyberpunk2077(サイバーパンク2077)」だ。同作は現在もPC向けベンチマークソフト代わりに使われるほどには描画処理の重いタイトルであり、これをSwitch2向けに移植するという発表は界隈を大きくざわつかせた。Switch2にて発売された「サイバーパンク2077 アルティメットエディション」は拡張DLCを含む作品でありながら、なんとフレームレートは40をキープ。もちろんコンテンツのグラフィックを極力損なう事もなく、また遅延も少ない。加えて携帯機で遊べるという要素も相まって、概ね好評を博している状況だ。

 これと比較してその移植ぶりに疑問の声が上がるのは必定であり、ベセスダ・ソフトワークスの移植に対する技術力が不十分ではないかという不満が高まっているのである。先日Fallout4のCreation Clubコンテンツ入りバージョンである「Fallout4 アニバーサリーエディション」を出した所、最適化不足などの杜撰さが目立ち大不評を買った件は記憶に新しいだろう。今回のSwitch2版Skyrim AEでも同じ事が繰り返されているのだ。Fallout4のセリフを引用する形で「Bethesdaは過ちを繰り返す」と揶揄されてはいたが、少なくともこれに対する改善策を早急に取らなければ、ユーザーはタムリエルの大地に背を向けて旅立ってしまうだろう。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。