Garenaは2025年12月15日、スマートフォン向けRPG「新月同行」の中国版において更新を停止した事を公式ページとXにて発表。併せて現在実装されている更新イベントを一通り日本版にも適用させるというロードマップを発表した。
隊長の皆さま、いつもご支援いただきありがとうございます。
— 新月同行【公式】好評配信中! (@FellowMoonJP) December 15, 2025
本日は、開発チームによる中国版『新月同行』の更新停止に関する最新の決定と、日本版の今後の方針についてご共有いたします。…
現在中国版で実装されているイベントの、日本版における実装期間は以下の通り。
・血繭時轍:2025/12/30 ~ 2026/01/21
・往像螺旋:2026/01/22 ~ 2026/02/04
・楽園ヤバクナイト:2026/02/05 ~ 2026/03/04
・難破船旅:2026/03/05 ~ 2026/03/25
・雨中徐行:2026/03/26 ~ 2026/04/15
・曙光の帰還:2026/04/16 ~ 2026/05/06
・シン・ユートピア:2026/05/07 ~ 2026/05/27
・鍍金贋造:2026/05/28 ~ 2026/06/24
日本におけるサービスインから4ヶ月程しか経っていない段階での更新停止の発表に日本のユーザーからは驚きの声が出ていると同時に、中国においても急に同作のサーバーに接続出来なくなったという報告がなされている。
#新月同行 隊長の皆さま,僕は中国版のプレーヤーだ。ゲームがリリースされてからずっとプレイしている、突然サーバーがシャットダウンしたというメッセージを見て、とても悲しくなりました。親会社の財政危機により、「新月同行」プロジェクトは中止せざるを得ませんでした。 pic.twitter.com/yhAwbwcVjh
— MeCullought (@mellit2456) December 15, 2025
原因は親会社の株式凍結か
本作品の開発企業である「烛薪网络科技(Firewick Game)」の発表では、開発中止の理由として「市場の急激な変化」と「運営コストの高騰」を挙げている。同作は確かにセールスランキングではそこまで上位に食い込めるタイトルではなかったものの、登場キャラクター達の魅力は悪くないタイトルであり、売上は少なくともファンをしっかりと持っていた作品であった。そのため、急激な売上減少といった話ではおおよそ無い。

直接的には報じられているものではないが、Firewick networkは独立系開発スタジオという体ながら、尚遊遊戯(公式サイトの記述では『深セン尚遊ネットワークテクノロジー』)という企業が母体として存在する。この企業についてはスマートフォンブランド「OPPO」とパートナーシップ協定を締結している他、中国大手の商業チェーン「歩歩高(BBK)」のグループ会社であるBBKエレクトロニクスという所から2007年に融資を受けている。そのうちのBBKエレクトロニクスについて、興味深いニュースに突き当たったのである。
中国の経済メディアである新浪財経の報道によれば、このBBKエレクトロニクスの株式を持っている步步高集团(BBKグループ)の株式1億9300万株が湖南省湘潭市中級人民法院(以下、「湘潭裁判所」)によって司法凍結されたとの事である。これらの株式はBBKの総株式資本の7.19%に相当し、凍結期間は2028年11月19日までとなっている。今回の株式凍結はリスクのエスカレーションではなく、步步高集团の再建プロセスを円滑に進め、資産の損失を防ぐための保護措置であると説明がなされている。早い話が出資元の株式が凍結され、経営状態を再建に導く中で、収益性の低いプラットフォームであるとして投資先の尚遊遊戯やそこに属する開発スタジオのFirewick networkが煽りを食った形と見るべきであろう。
ソーシャルゲームの継続可能性
ソーシャルゲームの開発は小規模な開発スタジオが行っている事も多々あり、そういった企業は入れ子式に大手企業の子会社として存在している。そうなると出資元の動向がそのまま子会社に降りかかりかねない状況となるため、出来る限り独自でIPを確保し独立採算制を打ち出せるだけの企業体力を持たねばならない。そういった意味では今回の開発終了は非常に運の悪い話として語られるべき内容だ。
そして何よりも残念なのは、ローカライズの質こそ場合によっては微妙であるが、ゲームとしての質は低くなく、サービス面においても現状不満要素が出ていなかったという点にある。ゲームそのものの瑕疵ではなくその盤外で起きてしまった出来事である。まして出資元の財政再建という話が真実であるならば、今回の件についての責任の所在をどこに置くべきかは非常に曖昧な所だ。
今回の件を受けて、2026年6月24日のイベント終了以降の取り扱いについても告知が改めて行われるとの事である。アプリによってはオフライン版への移行という事で配信期間を限定してのダウンロードを行ったり、あるいは買い切りで完全オフライン版を購入するといった措置を行うメーカーもある。ただしこういった事例は本当にごく少数であり、稀なものである。

もらい事故のように開発終了が決まってしまった新月同行。同作の今後の行方は中国における、ソーシャルゲームのサービス終了を見据えた対応の方向性を決定づける可能性があると言えるだろう。
