eスポーツも変革の時代へ 多様化するチームのあり方

 10月が始まってまだ初旬ではあるが、eスポーツ界隈では面白いニュースが立て続けに到着している状況だ。今回の記事では3つのeスポーツチームに関するニュースを取り上げ、そのユニークな試みを追いかけていくことにする。

なにはともあれ住宅から

 株式会社Fennel(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:高島稜、以下FENNEL)は、茨城県住宅着工棟数「地域ビルダー部門」9年連続No.1(※2014年~2022年 株式会社住宅産業研究所調べ)の実績を持つハウスメーカー、株式会社ノーブルホーム(本社:茨城県水戸市、代表取締役:福井英治、以下ノーブルホーム)とパートナーシップ契約を締結し、「モデルルーム共同開発プロジェクト」を始動することを10月1日に発表した。

 ノーブルホームが茨城県におけるNo.1のハウスメーカーとしての実績を持っている事に加えて、これまでスタジアム命名権やスポーツイベント支援などを通じて、暮らしと文化を結びつける取り組みを展開してきている。今回パートナーシップを結ぶチームのFENNELはZ世代を中心に人気を集めるプロeスポーツチームであり、SNSや配信を通じて積極的なアプローチを行っている。FENNELには茨城県出身のプロ選手「ま・しお(Pokémon UNITE部門)」が所属していることもあり、地域にゆかりのある人材ともつながる取り組みと意気込みを語っている。

 TGS2025の記事でも一部紹介しているが、eスポーツチームがまとまって生活可能なシェアハウスというのは必然的にその規模が大きくなる。例えばワンルームから1DKの様な回転率の良い物件であれば賃貸も視野に入るだろうが、集団戦をベースとするタイトルを主軸とするのであれば、複数名が生活するのに事欠かないだけの部屋数が必要となり、結果として複数階構造の大型分譲住宅あたりに限定されてしまうのが現実だ。それならとeスポーツチーム目線で設計・アピールし、ハウスメーカーとしてもそこの需要に対して食い込んで行きたいというWin-Winなコラボレーションであると言えるだろう。

最適な機器は実戦で磨かれる

 株式会社GameWith(本社:東京都港区、代表取締役社長:今泉卓也、以下)の子会社である株式会社DetonatioN(本社:東京都港区、代表取締役社長:梅崎伸幸、以下「DetonatioN」)が運営するプロeスポーツチーム「DetonatioN FocusMe」(以下「DFM」)は、液晶ディスプレイの製造を手掛ける「株式会社JAPANNEXT」とスポンサー協賛契約を締結したことを10月1日に発表した。

 株式会社JAPANNEXTは、千葉県いすみ市に本社を構える日本の液晶モニターメーカーである。PC周りをセットアップしたことがあるユーザーならば、おおよそ聞いたことがあるモニターメーカーだろう。そんな同社はゲーミングから大型・モバイル・ウルトラワイド・4K・サイネージまで、多彩なモニターを製造・販売している。そこと今回プロのeスポーツチームが手を組んだ形だ。

 eスポーツにおける重要な構成機器の一つがモニターだ。これは特にFPSや格闘ゲームなど、フレーム単位の入力・描画が求められるタイトルについて占めるウエイトが大きい。操作を行って一拍後に挙動が反映されるといったものではお話にならない性能であり、それ故にモニターの「応答時間」は競技用であれば1ms以下は最低ラインとされている。タイトルごとに最適な色彩や表示性能のモニターを設計するにあたり、eスポーツチームという高い能力を誇るユーザーの意見を参考に、よりヘビーユーザー向けも含めたハイエンドな製品の設計を行っていくのが狙いだろう。モータースポーツを通して自動車の技術が磨かれていくように、eスポーツを通して周辺機器の性能は高まっていく事を期待したい。

高齢者でも生き生きとしたゲームライフを

 株式会社デジタルハーツホールディングスが資本参加しているGeeSports万博実行委員会有限責任事業組合(以下、「GeeSports LLP」)が、「GeeSports」公式ホームページを開設したことを10月2日に発表した。GeeSports LLPは、高齢化社会が抱える課題に対し、エンターテインメント分野からのアプローチによる解決を企図し、加齢に伴う身体機能の低下に関わらず楽しめるゲームをデザインし、それをシニアeスポーツ「GeeSports」と定義している。

「GeeSports」は、ゲームが持つ新しい可能性に着目し、シニアである“GrandParents”が、ゲームをプレイすることで“Exciting”なワクワク感を得るだけでなく、生きがいや自信を持つきっかけとなることを目指しているとの事だ。また、ゲームを楽しむシニアの姿が周囲の人々に“Empower”する力を与え、世代を超えたコミュニケーションの創発を促すことを期待しているという。

 この団体は10月1日に2025年日本国際博覧会 フェスティバル・ステーションにて『シニア e-sports GeeSports大会 決勝』を開催しており、当イベント専用のタイトルとなるGeeSports用ゲーム『Gerogue(ジェローグ)』で競技を行った。公式のアナウンスでは新潟県、栃木県などから計22人が参加したとのことで、最高齢の参加者はなんと94歳というから驚きである。なおこの大会では、エキシビションマッチとして先述した「FENNEL」と「DetonatioN FocusMe」による試合も行われたとの事だ。

 実際にこのGeeSports以外にも、専用の筐体などを通じてゲームを交流活性化に用いる高齢者向けグループホームは徐々に広がりつつある。この活動を先導する日本アクティビティ協会によれば、高齢者であってもGRAN TURISMOで競い合ったりする事で、結果的に自分の価値の底上げやコミュニケーションの活性化に繋がるのだという。

 様々な方向性からアプローチしていくプロeスポーツチームのあり方は、今後さらに多様化するものと見て間違いない。ゲームをすることがよりよいゲーム環境や生涯のライフスタイルに寄与するとあれば、その社会的な見方も一層変わってくるのではないだろうか。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。