クーロンズゲートSuzakuがNintendoSwitch版のクラウドファンディングを開始

クーロンズ・ゲートSuzakuのイメージ画像

 11月4日、株式会社ジェットマンはPlayStation®で1997年に発売され、今なおカルト的な人気を誇る『クーロンズ・ゲート』の世界を再構築した『クーロンズゲートSuzaku』Nintendo Switch™版の限定パッケージを、2025年11月11日よりクラウドファンディングにて受注開始したことを発表した。

 同作は2017年にPlaystation VRにてリリースされた『クーロンズゲートVR Suzaku』をベースに、新たな場所、クエスト、キャラクターを追加し、非VR化によってグラフィック表現を大幅に向上したとしている。今回のクラウドファンディング限定パッケージでは、ゲーム内アイテムをモチーフにしたオリジナルグッズ、ビジュアルアーカイブや開発メイキング資料など、ここでしか手に入らない豪華リターンを用意しているとの事だ。

 とはいえ元の作品であるクーロンズ・ゲート自体がだいぶマイナーかつ奇妙な世界観を持つ、いわゆる知る人ぞ知るゲームである。今回はその原点となるクーロンズ・ゲートを紐解きながら、混沌とした流れを追いかけていこう。

奇妙な世界観彩る九龍城が舞台の奇作、クーロンズ・ゲート

 クーロンズ・ゲートは正式には『クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-』(クーロンズ・ゲート くーろんふうすいでん、KOWLOON’S GATE)というタイトルで、1997年2月28日にソニー・ミュージックエンタテインメントから発売されたアドベンチャーゲームだ。同作の舞台は中国に返還される前の1997年5月の香港。そのタイトルから分かる通り、東洋の違法建築の集大成とも呼ばれた九龍城は当時既に存在しない状態であったが、作中の現実世界「陽界」へ、表裏一体の世界「陰界」の九龍城が突如出現。この出現の原因が「四聖獣の見立て」が正常に行われていない事と判明し、香港最高風水会議は超級風水師である主人公を入口の龍城路へと送り込むというのが本作の導入だ。

 この作品は至る所で非現実的な描写が幅を利かせている状態で、細分化されすぎた分業を営む人々らと交流しながら、まるで迷宮の様な九龍城の中を所狭しと探索していく。「物」に執着する余りその「物」と化してしまう『妄人(ワンニン)』達の助けも借りて、街の至る所にある「胡同(フートン)」と呼ばれるダンジョンに巣食う、物に邪気が取り付いた『鬼律(グイリー)』を祓いながら、広大な九龍城を覆う邪悪な企みへと近づいていく事になる。この手のゲームには当時めずらしく、フートンでの移動を除けば街中の移動や会話、イベントシーンなどがすべてムービーシーンで構成されている。当時PlayStationでも可能であった3Dによるポリゴン表現は行わず、戦闘シーンにおける攻撃属性選択シーンとリアルタイムダンジョンである胡同以外は敵も含めてムービーやエフェクト表現で済ませている。また、アドベンチャーゲームである事を強調するためかおおよそのボス相手には特定のアイテムを使用する事で、戦闘が進む流れとなっている。

 作中を通して妄人になってしまう人々やその後の悲惨な顛末、グロテスクな最期など陰惨な描写が続く作品ではあるが、作中のネットワークシステム「クーロネット」のサイバーパンク的なガジェットとしての描写や、作品全体を通して構成される風水を主体とした物語の急展開、妙味などを評価する声もまた多く、全体的に奇妙で不可思議な魅力を放つ独特なタイトルとして知られた作品であった。

 本作で登場する九龍城はもちろん現実のものとは構造が違うが、その奇天烈極まりない迷宮ぶりに魅了されたユーザーも多く、後年メタバースサービスであるSecond Lifeにて、Kowloo(クーロン)というエリアが当時のクリエイターの手によって制作されている。またJR川崎駅南口にかつて存在したゲームセンター「アミューズメントパークウェアハウス川崎店 電脳九龍城」も本作に近しい内装であるとして、本作の再認知後に来客数が増えたとの話もあるほどだ。

派生するクーロンズ・ゲートと今後の行方

 本作クーロンズ・ゲートはそのカルト的な人気もあってか、現在2つの派生作品が登場している。その一つは今回挙げられたクーロンズゲートSuzakuであり、クーロンズ・ゲートの前日譚として構成された作品である。原作の雰囲気を残したままの新作という事で、ファンからの認知も行われたタイトルだ。ただし元々VRでの解像度や操作性に難があるタイトルとなっていた為、VR化そのものには否定的な声が多い。

 もう一つは本作の監督・脚本の木村央志自身が製作を手掛ける『クーロンズリゾーム-A DAY OF THE FIRE-』だ。こちらは本作の28年後を舞台としたムービーノベル方式で、移動シーンなどが無い簡素な出来ではあるものの本作のエッセンスを継承した作品として取り上げられている。

 ファンからの評価についてはプレイしてもらって確かめてもらう他ないが、いずれにせよ、今回の非VR対応版が出る事でコンシューマ向けに2つのクーロンズ・ゲートの続編が揃った事になる。この機会にぜひ、奇妙で底しれない九龍の世界へと足を踏み入れてみるのはいかがだろうか。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。