崩壊スターレイル、新エリア「二相楽園」実装へ 日本風コンテンツ排除によるチャイナリスクの顕在化

崩壊:スターレイルのVer3.8実装時の告知

 現在ゲームは世界各国でプレイされており、中にはグローバルに展開するタイトルも存在している。その中で、ゲーム内に特定の文化圏に属する要素をモチーフとしたキャラクターやエリアが持ち込まれるのは昨今よくある事だ。古くはストリートファイター2における「いかにも」というキャラクターデザインの多様性は、オンラインゲームにおける「特定の国家をモチーフにしたエリア、キャラクター」の実装を経て、ソーシャルゲーム時代には明確に必須となる程の影響力を与えるようになっている。ただし、これは現状懸念要素としても取り上げられる可能性が高い。

 miHoYoによって開発・運営される基本プレイ無料コンピュータRPGの「崩壊:スターレイル」。サービスイン後好調なヒットを飛ばしてきた同作が、まさかのアップデート方針の大幅変更に迫られているのである。現在控えていたv3.8アップデート後の更新スケジュールが延期になってしまったと公式アカウント上で呟かれているのだ。

 今回はこの内容を背景に、ゲーム開発に潜む「チャイナリスク」について捉えてみる事にする。

順調なアップデートの旅に赤信号

 崩壊:スターレイルはバージョン更新後のアップデートのタイミングについて、かなり積極的に行っている。メジャーアップデートの後、0.1ずつマイナーアップデートを重ねて次のバージョンをリリースするという流れとなっており、その期間は大体2~3週間サイクルとなっている。つまり「かならず次の月には面白いコンテンツが来るのでは?」とユーザーが期待して遊び続ける事が出来る、見方によっては開発のスケジュールに余裕がないかなりタイトな製品設計となっている。

 ところが今回、次のアップデート後に解放されるエリアが含まれるバージョン4.0アップデートについて、GameLookが報じた所によると開発の見直しが発生しているというのである。同記事では「初期デザインにおいて特定の国の文化要素を参照していた可能性がある」とされていた次のエリアに対して、公式側が急遽修正を迫られたとの事だ。これを受けて、バージョン3.9がリリースされるのは2026年2月13日とかなりの後倒しを強いられる事となった。

 次のエリアとして有力視されていたのは「弁才天国」または「江戸星」と呼ばれる場所で、作中のシナリオでも、存在する神の1人「アッハ」にフォーカスしたエリアであるとの説明がなされており、該当する神についてのシナリオが進行するものと期待されていた。作中の進行状況を表す「スターピースラジオ」という要素でも、弁才天国について言及がなされるなど、新エリアとして実装が期待されていたものと思われる。

 しかし今回急遽方針を変更した事で、アップデート後の次のバージョンのリリースはなんと8週間後とかなり後に延びてしまう事となった。また、二相楽園の案内に追加されている画像については、既存エリアのベロブルグやピノコニーの様な建物が設置されている画像であり、これだけを見るならば新エリアと言われてもぴんと来ないイメージとなっている。この手の大型アップデートでは毎回ムービーを用意する程の公式サイドとしては、まず考えにくい程の手抜き感と突貫工事感だ。そして、この背景にあるものと思われているのが「チャイナリスク」である。

開発国の事情に左右されるサブカルチャー表現

 崩壊:スターレイルの開発元であるmiHoYoは正式名称が、上海miHoYoネットワークテクノロジー(簡体字中国語: 上海米哈游网络科技股份有限公司)という中国の企業である。東京に日本法人を設立してはいるものの、コンテンツホルダーとしてはこちらの上海miHoYoが本体となっている。今回同社の中国法人としての立ち位置が、この事態を招いたのではないかというのは暗黙の了解となっている。

 アニメや漫画を巡る表現での規制は昨年後半から急激に相次ぐ事となった。中国の杭州で27〜28日に開催される中国最大規模の同人イベント「COMICUP」の第32回(CP32)組織委員会は19日、イベントを「新国風専場」に変更し、テーマに沿わない展示物を全て撤去すると発表した。この動きは、出展を事実上、中国の国産IP(知的財産)に限定して日本のIPを締め出すものと見られている。これについて中国国内のSNSである「微博(Weibo)」では失望の声が広がっていた。

 また上海市で2025年11月28日に開催された「バンダイナムコフェスティバル2025」ではアーティストの大槻マキ氏が強制的に歌唱を中断され、出演グループのASH DA HEROの公式アカウントより出場中止の告知も流される異常事態が起きたのは、読者の記憶に新しい所だろう。

 こうしたコンテンツに対する取り締まりとも取れる情勢の上で今回のアップデートの更新延期を見る限り、崩壊:スターレイルが次回公開するエリアについて「日本風のコンテンツがあり、それを急遽手直ししている」という見方が大きく広まっている状況だ。特に弁財天や江戸といった名前が出ている以上、まったく関係の無いエリアとは言い切れない。

 こうしたゲームの公開についてのコンテンツの調整は、ひとえにゲーム自体が「主力産業」と見なされてしまっているが故に、国策に利用されてしまっている危うさを如実に表している。それこそユーザーを惹きつけてやまない表現が、政治的圧力というまったくの門外漢によって盤面を荒らされる様な事態が起きているのである。この手の地政学的リスクから表現を保護するだけのシステムが求められる状況となってしまっているのは、ゲームやアニメといったコンテンツが巨大になった事を喜ぶべきか、それとも政争の具となる愚かさを嘆くべきなのか、ゲーマーとしては頭を抱える所である。

1995年神戸生まれ。ゲーム記事エディター。国内メディアのゲーム・エンタメ記事編集者として5年勤務後、フリーライターとして複数のメディアで活躍。ビデオゲームの専門レビューや特集を中心にお届け。