株式会社SNKは、発売中の対戦格闘ゲーム『餓狼伝説 City of the Wolves』について、『ストリートファイター』とのコラボキャラクター「春麗」を2025年11月5日に配信することを11月3日に発表した。先行して11月1日に同コラボレーションについてのPVを発表しており、キャラクター追加直前に正式に発表された事となる。PVでは今冬とされていたが、かなりの前倒しの実装となりそうだ。なお今回の春麗については、MARVEL vs CAPCOMで新規実装されたスーパーコンボである「七星閃空脚」をモチーフにした「七星閃煌脚」という超必殺技が実装されている。
対するカプコンのストリートファイターシリーズ最新作である6には、餓狼伝説シリーズから「テリー・ボガード」と「不知火舞」が参戦を果たしている。今回晴れて両作品のキャラクターが2人ずつ参戦した事になるが、両者間のコラボは何もこれが初めてな訳では無い。そんな両社のコラボの流れを今一度紐解いてみよう。
CAPCOMとSNKの潮流の交わり
CAPCOMの格闘ゲームといえばストリートファイターシリーズが有名だが、元々他のジャンル、例えば1943 ミッドウェイ海戦の様な縦シューティングやロックマンシリーズに代表される当時の往年の作品群の一つとして芽吹いたのが初代ストリートファイターである。当時人間の動きを表現するにあたり、2ボタン+レバー式ではそのバリエーションが限られた所から「必殺技」の概念が生まれたとされている。
SNKはその後CAPCOMから発表されたストリートファイターⅡが稼働する頃、同じくアーケードゲームとしてシューティングゲームの怒シリーズやアテナシリーズに続く作品として「餓狼伝説」をリリース。ストリートファイターⅡとは違う2ライン制の奥行きのあるバトルと、違うベクトルのキャラクターデザインはこちらもユーザーからの興味を大いに引き付ける形となった。その後同社からはワールドヒーローズ、次いで龍虎の拳がリリースされており、この内龍虎の拳において搭載された「超必殺技」という特定コマンド入力で繰り出せるシステムについては、後にCAPCOMから発売される「スーパーストリートファイターII X -Grand Master Challenge-」にもスーパーコンボという名称で導入される事になった。
この頃からゲームセンターにおける格闘ゲームの潮流としてCAPCOMとSNKは切っても切れない間柄となっており、更に両社は格闘ゲームシリーズを次々と展開。CAPCOMからはMARVEL系ジャンルの格闘ゲームやヴァンパイアシリーズ、ウォーザードなどのタイトルが続き、SNK側もサムライスピリッツシリーズ、そしてTHE KING OF FIGHTERSシリーズのリリースなど、ゲームセンターの格闘ゲームは一大ジャンルとして花盛りを迎える事となった。当時はハードウェアについても、SFCからPlayStationへの移行が続いており、一般の家庭でもアーケード版と多少の違いはあるだろうが高品質な格闘ゲームが遊べるようになった。もちろん携帯ハード向けの格闘ゲームも両社から出ており、文字通り余す所なく格闘ゲームの認知度が高かった時代と言えるだろう。
そんな中で格闘ゲームの2大メーカーとなった両社が交わるのは1999年。奇しくもSNKの経営に陰りが見え始める頃であった。ネオジオポケットカラー専用タイトル「頂上決戦 最強ファイターズ SNK VS. CAPCOM」が格闘ゲームとして両社がコラボレーションした最初のタイトルであり、両社の格闘ゲームを代表するキャラクターがネオジオポケットカラーという制約のあるハード上ながら高品質な格闘ゲームを繰り広げる様子は、当時の格闘ゲームファンに高く評価される事となった。その後CAPCOMから「CAPCOM VS. SNK MILLENNIUM FIGHT 2000」を経て、完成形となる「CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001」が登場。両社44名のキャラクターが入り乱れて戦う総合コラボ格闘ゲームという事もあるが、何よりもSNK側のキャラクターの多数がCAPCOM製のドット絵で表現しつくされるというビジュアル面の強さは当時のドット絵表現の一つの到達点といっても過言ではない。その後SNKプレイモア側から「SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS」というストリートファイトテイストを押し出した作品が出されるなど、2000年代前半に掛けて両社のコラボがゲームセンターの一角を占める事となった。
しかしSNKの経営悪化やそれに伴う同社タイトルのリリース不振などを受け、その後SNK側が息を吹き返すまでに長い歳月を経る事となった。今回のコラボレーションは、晴れて格闘ゲーム界に舞い戻ったSNKと、古くからの腐れ縁とも言えるCAPCOMとの久々の共同作業とも言えるのである。
もちろんこの光景が繰り広げられるまで、幾つもの格闘ゲームタイトルが生み出されユーザーの心を掴んでいった。その上での今回の「餓狼」と「スト6」コラボには、大きな期待を寄せざるを得ない。なお完全な余談ではあるが、春麗とケンが1タイトルに参戦しかつ春麗側が鳳翼扇、ケン側は疾風迅雷脚を搭載しておりジャストディフェンスもある事でいわゆる「背水の逆転劇」の再現も可能となっている。ぜひ興味があればやってみるのもオツな話だろう。
