エースコンバット8 Wing of Thevesが2026年に発売と発表

エースコンバット8の公式画像

 2025年にリリースされたゲームの中から、世界のゲームメディアやゲームファンの投票によって選ばれた、すぐれたゲームに贈られる“The Game Awards 2025”(ゲームアワード2025)。先日その受賞作の発表および授賞式が、2025年12月12日(金)午前9時30分頃(日本時間)からアメリカのロサンゼルス・ピーコックシアターにて開催された。

 その同イベント中に発表となったのが、エースコンバットシリーズ最新作『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』(エースコンバット8 ウイングス・オブ・シーヴ)だ。同作は2026年にPlayStation 5/Xbox Series X|S/PC(Steam)向けに発売予定であることが発表されると共に、トレーラームービーとしてYoutube上にて動画も公開されている。

 同作は前作「エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』(ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWN)」の続編であり、作品を巡る様々な設定や背景事情も相まって相当な盛り上がりを見せつつある。今回はそんな同作について、現在わかっている情報を追いかけていこう。

「偽物の翼」

 シリーズ30周年を記念する作品となる本作のあらましは次のとおりだ。戦闘機パイロットであるプレイヤーは、救難ボートで海を漂っているところを旧式空母「エンデュランス」に拾われる。中央ユージア連合(Federation of Central Usea、FCU)に属する老朽艦である同艦は、母国の海軍がほぼ壊滅状態に追い込まれている。2029年7月に中央ユージア連合は、ソトア共和国の電撃侵攻を受け、主要戦力を喪失してしまったのである。侵攻は苛烈の一途をたどり、敗走は止まらず、国土の大半が占領される中、残存戦力も散り散りとなってしまう。エンデュランスもその煽りを食っており、避難民を抱えたまま、戦線を離脱していたのである。

 人材不足に喘ぐエンデュランスだが、そこには1人のエースがいた。「シーヴの翼」──FCU首都シーヴの名を冠した、希望の象徴として語られる伝説のエースである。公式のトレイラームービーでは、副座式の戦闘機の後席にプレイヤーが乗り込み、操縦担当が前席の「シーヴの翼」となる。だが公式サイトには「しかしその名声は真実ではなかった。」という記述がある。映像内でも何らかのトラブル、あるいは撃墜により二人の乗った機体は海中へ没する事になる。後部座席に座ったプレイヤーは、シーヴの翼のヘルメットを持ち帰り、新たな仲間と共に「シーヴの翼」として戦場に身を投じる。そう、「シーヴの翼」の名を借りて飛ぶ事になるのだ。

 これまでのエースコンバットシリーズでは、作中における主人公は傭兵組織の所属であったり、あるいは軍事組織の所属ではあるが、最初はひよっこである主人公がエースとして「認められ、成長していく」様が作中を通して描かれていた。しかし今作はそんな今までの展開に真っ向から挑戦する「エースの名前を借りただけの一パイロット」という衝撃的な立場でのデビューだ。これだけでも同作が今までと舵取りの違う作風である事を期待される一因となっている。しかしこの作品にはもう一つ、重要な要素が絡んでいる。1999年にリリースされたシリーズ3作目『エースコンバット3 エレクトロスフィア』(ACE COMBAT 3 electrosphere)の存在だ。

ストレンジリアルの交差点

 エースコンバットシリーズの中で、エースコンバット3は特に異質な作風だ。舞台となるのは2040年のユージア。エースコンバット04や7でも「ユージア大陸」として出てきた同地域は、既に国家が機能を喪失しており、巨大企業「ゼネラルリソース」の信託統治領としてその名を残すのみの存在だ。人々はデータスワローという情報ネットワークによりテレワークなどが進み、現実の2025年では当たり前となっているが「ビデオフォン」「検索エンジン」などの技術やナノ技術などの発展が見られている世界だ。

 この作品に関わる重要人物「アビサル・ディジョン」はエースコンバット8の時から3年前の2026に最盛期のパイロットとして所属組織「GRDF」のエースとして戦果を上げている。恋人であり脳生理学者「ヨーコ・マーサ・イノウエ」と共に、ゼネラルリソース内で極秘の研究を行っていた。人間の意識を情報世界へとアップロードする「電脳化」に関わる研究を行っていたが、それを危惧したゼネラルリソース上層部により両名は爆殺される。それが丁度2030年であり、これを機に電脳化の研究は一旦ストップし、並行して研究されていた超高性能戦闘機「X-49 ナイトレーベン」の計画が凍結されるという、同作の根幹に関わる重要な事態が発生している。エースコンバット8の年代である2029年は、まさにこの事態の「交差点」とも呼べる位置なのである。

 エースコンバット3は非常に世界観設定が練り込まれており、その後のエースコンバット04からの世界観設定は「リアリティに沿った架空の世界」としてストレンジリアルという用語を用いて綿密に描かれる事になった。そしてこのストレンジリアルの走りであり、かつ作中年代では最も未来に位置するエースコンバット3の時代に、エースコンバット04から連綿と紡がれてきたストレンジリアルの歴史がようやく追いつくのである。

 熱心なファンは「これでようやく3の話が出るのか」「3の重要人物は出てくるのか」といった期待の声が寄せられている。現にエースコンバット7でも断片的に、先述したヨーコというキャラクターの名前が出ている。今作はそれ以上に食い込んだ描写も期待出来るだろう。

 なによりエースコンバット3の「国家が既に形骸化した世界」に至る道筋として、04における小惑星ユリシーズの衝突、7における衛星通信網の相互大規模破壊による通信インフラの喪失とそれに伴うユージア全土の混乱いう事態を経ている。8においてはようやくまとまりかけたユージアが、第三国であるソトア共和国になすすべもなく倒されつつある。こういった情勢では、既に「国家」が機能しない状況にある事を人々は悟るのかもしれない。またエースコンバット7のDLCコンテンツにて、エースコンバット3の企業であるゼネラルリソースがその萌芽を至るところに持っており、エースコンバット7の時代から強烈な影響力を持っている企業である事がこれみよがしにアピールされている。そこからのエースコンバット8の流れとなれば、ゼネラルリソース台頭の様子も描かれる可能性は大いにある。

 2026年発売となっているエースコンバット8、今後の同作の動向から目が離せない状況が続きそうだ。

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。