2025年はレースゲームの当たり年 日本に注がれる熱い視線

 東京ゲームショウ2025のビジネスデイでは多くの発表がなされ、ユーザーのゲームに対する期待は鰻登りとなることが多かっただろう。そういった中でひときわ注目を集めたゲームジャンルの一つがレースゲームだ。

 同ジャンルでは9月25日に立て続けに新規情報が公開される形となった。まず首都高バトルの最新作のPS5版について開発が決定。これに呼応する形でGRAN TURISMO 7の新規アップデート「SPEC Ⅲ」が12月に行われるとの発表もなされた。これだけでもレースゲームファンのボルテージは最高潮になるが、そこにトドメの一押しとなる情報が追加される。日本マイクロソフトが9月25日19時に配信した「Xbox 東京ゲームショウ 2025 ブロードキャスト」内にて、レースゲーム「Forza Horizon 6」を2026年に発売すると発表したのである。この五月雨式の発表にいよいよユーザーの期待はオーバーヒート。今年下半期から来年一年まで、レースゲームファンにとっては期待の大きい一年となりそうだ。

注目される日本らしき場所が舞台のレースタイトル

 首都高バトルについては何度か取り上げているが、同作については実際に首都高を走行できるという点やこだわりの登場車両など、密かなファンが多い作品であった。そこにSteam配信というワールドワイド向けに公開できるシステムが加わった事で一気に作品がヒットし、やや大味なレース感はあるものの未だに高い人気を誇るタイトルとなっている。

 またこれに先行して発売されたSteam発のゲームとしては「JDM: Japanese Drift Master」が挙げられる。こちらはレース中心というよりはドリフト要素に主軸をおいたゲームであり、架空の「郡玉県」を舞台にドライバー達がしのぎを削り合うゲームとなっている。こちらも多くの日本車がライセンス許諾を受けて登場しており、海外発のインディーズゲームながら「やや好評」扱いと大健闘を見せている。

 日本風のロケーションが登場する最近のタイトルとしては「CarX Street」も注目されている。こちらはもともとモバイル向けに提供されていたものを、Steam版やXbox版としてブラッシュアップして登場させたものである。こちらはフィールド内に日本風の庭園や城郭が登場する他、レーシング系コミックス発の「あの豆腐屋」らしき建物や日本風の舗装の道路もあるなど、だいぶロケーションが日本に寄っている要素が強い架空都市である。こちらも同じくやや好評という評価を得ており、人気の高いタイトルだ。

 もちろん海外を舞台にしたレースゲームも数多く存在するが、日本という「記号としてわかりやすく、それでいてレースに映えるロケーション」を備えたところは現実としてはそう多くないのだろう。また日本という決して広大な訳では無い島国でありながら、自動車メーカーが所狭しとひしめき合っており、そしてそれらのメーカーが作る車両はどれも一定の評価を得ているという極めて特殊な事例を持つ地域である事も欠かせない。まして現実問題として環境に対する配慮が声高に叫ばれる中で、レースゲームの中では存分にエキゾーストノートを吹かしても誰も文句を言わないのである。

 またレースゲームに対するアーケードゲーム文化が根強い事もまた、日本がレースゲームの舞台として選定されるだけの魅力を持った地域となる理由であろう。リッジレーサーシリーズやセガラリーシリーズといった大型筐体を用いたゲームの様相は、当時のプレイヤーや見物客に対してレースゲームへの強い憧憬を抱かせ、そしてその結果として現在はリニアシートやハンドルコントローラー、ペダルコントローラーといったこだわりのガジェットが生まれている。こういったものを生み出す土壌に対して一定の「Respect」があるのかもしれない。

 とはいえすべてのレースゲームに対して、日本が日本らしい形として出ているというものではない。オープンワールド系レースゲームとして親しまれている「The Crew」シリーズではあるが、2作目のThe Crew2や3作目のThe Crew Motorfesにおいては日本車や日本をモチーフにしたイベントが存在する。といってもイベント自体が8bit風ピクセルで構成された狭いレースコースを走るだけであったり、青白いネオンが光るコースを走ったりとあまり味気ない演出となっている。The Crew2においては中国の旧正月をイメージしたイベントはあるが、こちらは派手なコース上の演出や専用BGM、そして広めのライン取りが出来るコース設計など、明らかにそちらが優遇されているのではないかと思えてしまう出来である。開発・発売元がUbisoftであり、昨今のソフトウェアを巡る開発事情を見る限り、あまり日本は同社においては歓迎されていない可能性も考えられる。

 いずれにしても、首都高バトルを初めとした話題となるレースゲームタイトルが続々と情報解禁を行っているのは興味深い事例と言えるだろう。それだけお互いの企業が注目しあい、フットワークを軽くして情報発信に努めているのは業界として健全さすら感じるほどだ。まだまだ熱いレースゲーム業界に、次はどんなタイトルがエントリーしてくるのか。期待が膨らむばかりである。

1987年東京生まれ。ゲームニュース編集者。10年以上の国内ニュース記者および編集職を経て、現在フリーエディターとして活動中。国内・海外の業界ニュースやトレンドを中心に日本の読者にいち早く情報をお届け。