2026年1月29日の官報に、とある企業の解散公告が掲載された。企業の名前は「株式会社Comcept」。ゲーム開発企業として立ち上げられた同社だが、今回掲載された代表清算人の名前に覚えのある人はいるのではないだろうか。「稲船敬二」氏、かつて株式会社カプコンにてロックマンシリーズなどにも携わった人物である。彼の立ち上げた企業が、ひっそりと解散していたのであった。本記事では同社の手掛ける作品も含め、その背景事情を追っていく。

Mighty No.9の痕跡
同社は2010年11月に株式会社カプコンを退社した稲船敬二氏が2010年12月1日に設立。拠点は大阪府大阪市。ゲーム開発事業の他にも書籍、音楽、映像ソフトの企画、制作、製造、販売、ならびに版権事業や企業および個人向けのイベント、研修会、講習会などの各種教育事業に関する企画、立案、制作、運営ならびにコンサルティング業務といった文言が公式サイトには並んでいる。クリエイティブ企業として多方面に枝を伸ばそうとしていた痕跡が見て取れるようである。
展開していたゲームタイトルは、アクションRPGである「ReCore」、PlayStation Vita(PS Vita)専用RPGである「ソウル・サクリファイス」シリーズなど。ReCoreについては現在Steamでは「ReCore:Definitive Edition」を購入する事が可能となっている。
そんな同社を代表するソフトが「Mighty No.9」だ(リンク先はSteamのストアページ)。当ソフトは「ロックマンシリーズ」に対するフォロワーとしてのソフトであり、横スクロールアクションゲームとしては似たようなゲームシステムとなっている。すなわち敵を遠距離攻撃手段で倒し、トゲなどの即死トラップが設置されているステージ上を移動しながら、最深部に潜むボスを倒していくというものだ。ゲームシステムの面から見れば、同作はある種真っ当なまでのフォロワータイトルと言えるだろう。
ただし本作の成立とその評価についてはユーザーはかなり辛口の評価を下している。本作は資金調達プロジェクトKickstarterを利用したプロジェクトであり、2013年9月1日にゲームイベントPAX Primeにて本作の開発を発表。なんとそれと同時にKickstarter上で出資者を募集を開始するという前代未聞の滑り出しを見せた。資金調達になんとか成功し、配信開始は2015年春を予定していた同作。だが延期を重ね、最終的に2016年の6月(一部機種は8月)に配信開始となった。また、出資者募集時に予定されていたグッズに関しては、2017年7月以降に発送されるなど、Kickstarterで資金を募ったは良いがその後の身の振り方に問題がやや見られる事態が起きていた。
作品そのものについても即死トラップの多さやアクション面の練り込み不足が指摘されている。そのうえで作品そのものがあまりにも「ロックマン」に寄せすぎているという、ロックマンフォロワーとしては余りに忠実な出来になってしまっていたのだ。そして今から紹介するタイトルは、ロックマンフォロワーとしてのタイトルでありながら明確な差別化を図り、そして新作や他作品コラボレーションを積極的に果たすに至ったものである。インティ・クリエイツ発のタイトル「蒼き雷霆 ガンヴォルト(アームドブルー ガンヴォルト)」シリーズだ。
蒼き雷霆の閃き
「蒼き雷霆 ガンヴォルト」は2014年8月20日にニンテンドー3DS向けに発売された、2D横スクロールアクションゲームである。主人公ガンヴォルトが銃(ダートリーダー)で敵をロックオンし、雷撃鱗(ライゲキリン)という技能でまとめて敵をなぎ倒すという、ストラテジックな面も内包する新規IPとしてリリースされた。いわゆる厨二病的な要素を多分に含むストーリーはこの時代のゲームとしては珍しくなく、それでいて滑ることも無い高評価を得ている。ゲームを遊びやすくする工夫としての難易度調整も施されており、クリアするだけならばそこまで難しくはない。もちろんこだわりのスコアアタックなど各種要素を突き詰めれば難易度は劇的に高まるので、そこはプレイヤーの腕と要相談だ。
同作を手掛けるのは、ロックマンシリーズの派生タイトルであるロックマンXシリーズから更に枝分かれした「ゼロシリーズ」「ゼクスシリーズ」を手掛けるゲーム制作企業のインティ・クリエイツだ。両シリーズを絶妙な難易度と独特の世界観構成で味付けした結果、同社のアクションゲームメーカーとしての知名度は相当に高く評価されている。その同社が本格的に別IPとして新規に立ち上げたタイトルの一つが蒼き雷霆 ガンヴォルトである。同作品は高い評価を得た結果、現在は3作目までタイトルが継続するシリーズとなっている。現在は「蒼き雷霆 ガンヴォルト トライアングルエディション」という3本ひとまとめになったお得なバンドルが2025年に発売されており、PCではSteamでも遊べてしまう。
SteamDBのデータではあるが、Mighty No.9と蒼き雷霆ガンヴォルトの売上本数について面白い傾向が見られる。ガンヴォルトシリーズ3作品、そしてスピンオフタイトルである白き鋼鉄のXシリーズを含めるとMighty No.9の販売本数を上回る結果が出ているのだ。ガンヴォルトについては稲船敬二氏と第一作目は協力して作り上げたと宣伝されているだけに、その後の展開を行えたか否かでシリーズの命脈が変わるのは興味深い。
精神的続編の残り火
さて株式会社Comceptはその後、ロックマンシリーズ派生作品のロックマンDASHシリーズ3作目が開発中止になった事を受けてか「RED ASH」というタイトルを手掛け始める。しかしこちらは公式サイトにバナーこそあるが、現状2022年以降ページにアクセスできない状況らしく、現在は閲覧不可の状態が続いている。また事業自体はゲーム開発企業である株式会社レベルファイブと共同で「Level5 comcept」を2017年に設立したが、2025年には同社はレベルファイブ大阪オフィスとして吸収された事が発表されていた。それ故事業そのものの継承が行われ、会社としては抜け殻となっていた可能性は高い。
そして代表の稲船敬二氏は、コナミ発のボードゲームシリーズ最新作「桃太郎電鉄ワールド 〜地球は希望でまわってる!〜」の製作を手掛ける株式会社ロケットスタジオの執行役員として、Sapporo Game Camp 2025でトークショーを行っていた。今後ロケットスタジオに厄介になりながら、ゲーム制作に携わる可能性はなきにしもあらずである。
一方でロックマンシリーズはなんとか命脈をつなぎ、新作「ロックマン:デュアル オーバーライド」が2027年に登場する。カプコン側も重要なIPとしてロックマンシリーズを見直す動きが出ているのは、同社のやや前のめりとも言える熱の入れようから見て取れる。
かつて同シリーズに元々関わっていた人間がまったく別ジャンルの企業に高跳びをし、元々フォロワータイトルをもり立てようとした会社は社員の雇用も含め失われる形となった。この顛末を見て、なんとも静かに立つ鳥ではいられなかったのかとうら寂しい思いに駆られるものである。
