ASUSがGeForce RTX 5070 Tiモデルの生産終了を発表 大容量VRAMの冬の時代が来るのか

ASUSのRTX 5070Tiの画像

昨今メモリ不足が嘆かれる中で、その懸念が遂に現実のものとしてゲーマーに押し寄せてくる流れがやってきそうな状況だ。1月16日にX上のタイムラインを駆け巡ったのは、GeForce RTX 5070 Tiが品薄もしくは生産終了による絶版となる可能性の懸念である。今回はこの事態について、俯瞰的に見てみるとしよう。

ハイエンドグラフィックは手の届かない時代になるか

 海外ハードウェア系メディアであるHardware Unboxedが1月15日に報じた所によれば、ASUSが「GeForce RTX 5070 Ti」製造を中止したという事である。先日開催された「CES 2026」に際し、ASUSをはじめとするAIBパートナーや小売業者に対しておこなった取材で明らかにされたこの話は、ただちにネットを駆け巡る事となった。

 今回対象となっているRTX 5070 Tiは16GBという大容量のビデオメモリを搭載するグラフィックボードであり、特に高画質のテクスチャをふんだんに利用する環境と相性の良いモデルとなっている。昨今リリースされている多くのグラフィックボードは、搭載されているメモリが8GBという容量に留まっている。もちろんゲームを快適に動かすだけの性能は上がっているものの、その容量の制約のおかげで高画質のテクスチャを読み込んでプレイする事が出来ないというデメリットが存在する。

 これまで出てきた中で名機と言われるのは、RTX 3060のメモリ容量12GBのモデルである。現在の最新鋭のグラフィックボードにこそ性能は劣るものの、当時12GBという容量は他の追随を許さない程に圧倒的であった。モンスターハンター・ワールドの高画質テクスチャパックは8GBのメモリで容量がギリギリな程に重いものであったが、これをグラフィックボード単独で解決してしまう性能に誰もが目を見張るものであった。また、処理能力以上にグラフィックボードのメモリ容量が重視されるVR界隈においても、同グラフィックカードは傑出した評価を得ている。

 RTX 5070 Tiは性能が向上していながらもメモリ容量が16GBであり、かつお値段もそこそこ中堅レベルであるというお手頃さも相まって高い人気を誇る製品であった。3060 12GBモデルからの乗り換え先としても注目されていた同製品だが、ここにおいてメモリ需要の逼迫により生産が危うくなっているという状態だ。1つ前のモデルである16GBのグラフィックメモリを搭載したGeForce RTX 5060 Tiの生産数も落ちているとの事で、こちらもASUSは生産終了とする可能性が濃厚となっている。

 ただし本件を報じた別メディアのThe Vergeによれば、NvidiaのGeForce担当グローバル広報ディレクター、ベン・ベラオンド氏が「GeForce RTX GPUの需要は堅調で、メモリ供給は逼迫しています。当社は引き続きすべてのGeForce SKUを出荷しており、サプライヤーと緊密に連携してメモリの供給を最大化しています。」と語っているとの事である。メモリの生産自体は堅調に進んでおり、あまり騒ぐ様な事態は起きないから落ち着いて欲しいという想定が透けて見える。

高騰するミドルレンジモデル

 とはいえこの事態の影響は、何もグラフィックボードの値上がりだけではない。同一の素材を軸とするDRAMでもその影響は大きく、PCの相場はかなりの値上がりを見せている。

 ゲーミングPC検索サイト「gg(ジージー)」を運営する合同会社気づけばは、2025年12月におけるゲーミングPCの相場価格の動向をまとめた月次レポートを1月12日にプレスリリースという形で公開している。それによれば、最も値上がりした構成としてミドルレンジ帯のPCが挙げられるという。

 同データのミドルレンジ帯PCの条件は、搭載GPUがRTX 5070、RTX 5060 Ti(8GB,16GB)、RTX 4070 SUPER、RX 9070、RX 9060 XT、RX 7800 XTを対象として選出されたものである。12月1日時点の相場価格中央値が269,980円であったが、12月31日時点では324,980円と実に5万5千円の値上げ幅だ。今回焦点となっている5070 Tiモデルを含むハイエンド帯も、中央値が12月1日時点で414,800円、12月31日時点で448,000円と3万円以上の値上がりである。とはいえハイエンド帯でも「RTX 5070 Ti搭載、CPUはCoreUltra7 265KF」という構成は、月初409,980円だったところが月末464,980円まで価格が上がっており、こちらの値上げ幅も5万5千円である。このあたりのグラフィックボードの値上がり幅が大きいと見て間違いない。

 もちろんハイエンドでなくとも良いなら、3060の12GBモデルの様な名盤を利用する事は間違いではない。ただし昨今のゲーム市場で付いてこられるスペックかといえば、既に結構な年月が経過しているため手厳しいハードである事は間違いない。そして消費者の間で広まりつつある「サーバー向けのメモリに偏重した結果、一般PCユーザーや企業向けグラフィックボードが枯渇する最悪の事態への不安」を拭うことこそが、現状NVIDIAに課せられた生産者責任と呼べるのかもしれない。いずれにせよ、どんどんと値上がりするPCはその裾野もどんどんと狭めてしまっている状況となっている。せめてこの冬の嵐が、早々に過ぎ去る事を祈るばかりである。

 

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。