グランゼーラの賃金未払問題 ゲーム業界に垂れ込める暗雲

R-Type Tactics 1&2 Cosmosの画像

 2026年1月7日に、株式会社グランゼーラは「当社における賃金支払いに関する一部報道の件につきまして」と題したプレスリリースを公式サイトにて発表。2023年から数年間の業績不振により、本来履行すべき賃金の支払いが滞った事についての詳細を報告するに至っている。

 ゲームの開発費は年々高騰しており、一からIPを作り上げるにも多大な労力が求められる時代となった。単独開発や少数開発のインディーゲームならばまだしも、ゲーム会社を立ち上げて事業化を行う為には相応の売上がなくてはならないし、同様に運転資金も必要だ。とはいえこういったブラック企業然とした内容は、ゲーム業界に悪印象を与えかねない。今回は明るみとなったこの件について、少々掘り下げを行ってみよう。

グランゼーラと他の二社の書類送検

 今回MRO北陸放送が報じた所によると、石川県における金沢と野々市の関連3社が最低賃金法違反の疑いで書類送検されたとの事である。書類送検の対象となったのは、ゲーム制作会社・グランゼーラの他、関連会社のギャクテンゲームズとアールスタジオの二社。あわせて、グランゼーラとギャクテンゲームズで社長を務める59歳の男性と、アールスタジオで代表取締役を務める59歳の女性の2名も追加で送検されている。

 金沢労働基準監督署によると、3社は2023年5月から2024年8月にかけて、従業員あわせて46人に9か月分の給与、約1841万円を支払わなかった疑いが持たれている。従業員からの相談を受け行政指導を行ってきたものの、改善されなかったため、6日付で書類送検されたとの事であった。

 株式会社グランゼーラはゲーム会社であるアイレムソフトウェアエンジニアリングから独立した企業であり、移籍したゲームクリエイターの九条氏がアイレム在籍時に中核的存在として開発していた絶体絶命都市シリーズタイトル(新規タイトルを含む)に関する全世界でのIPおよび販売権を2014年に取得。シューティングゲーム「R-TYPE」シリーズについても、R-TYPE FINAL2以降の同シリーズの開発と発売を同社が手掛けている。

 ギャクテンゲームズとアールスタジオについては、どちらもゲーム開発企業として公式HPを設けている。ただし両社ともコンテンツ開発実績などの掲載は行っておらず、現在未発売のソフトを開発中であるのか、それとも他事業に未掲載となるレベルでの関わりがあったのかははっきりとしていない。いずれにせよ両社の動向については明確な情報が存在せず、グランゼーラが今後発売予定のR-TYPE TACTICS I・II COSMOSについて関わっているのではないかという可能性も考えられる。同作は以前発売されたR-TYPE TACTICS二作をひとまとめにし、そのうえで後日談となる「コスモス編」12ミッションを加えた物となっている。立ち位置的には.hack//G.U. Last Recodeの様な「追加シナリオ付きリマスター版」といって差し支えないだろう。

 今回書類送検となった内容は従業員の賃金未払いであるが、グランゼーラの公式サイトの説明によると「2023年5月から2025年5月までの間、事業の不調から支払いに必要な原資が不足したため、従業員と相談の上、2023年5月、6月と8月支払い分の給与について支払いを待ってもらうお願いをいたしました。その後新しく発生する給与については支給しておりましたが、未払い分相当額の支給には時間がかかってしまい、段階的に未払い分の支給を進めつつも、最終的に解消できたのが2025年5月となってしまいました。」とある。賃金の未払こそ発生していたものの、現状は解決しているものであると会社としては捉えているようだ。

 また「前述の事業不調の時期に状況を打開しようと一部の従業員が中心となり新たな制作会社を設立し、事業を進めて参りましたが設立直後の数か月間は事業が軌道に乗らず、何度か遅配が発生しておりました。現在は事業が軌道に乗り、給与の支給も行っている状況です。一部残っている未払い分につきましても、分割しての支給を進めており、2026年春には完全に解消できる見込みと報告を受けております。」という記載も公式サイト内でなされている。

 これがギャクテンゲームズやアールスタジオの事であったのかは定かではないが、アールスタジオの業務内容についてVRコンテンツの製作なども掲げられており、既存のゲーム制作とは違う切り口から事業を行おうとしていた形跡は見られる。ただしVRコンテンツについては専門の知見が無ければコンテンツの出来上がりはいまいちなものであるため、なかなかに手厳しい船出である事は予想される。

 同社は再発防止に向けた体制の見直しおよび改善を行うとともに信頼関係の回復に務めていくと声明を出しているが、これに関してはそういった声明を出すだけでは事態の収束は難しい局面となってしまっている。ゲーム会社は大手であってもUBIハリファックスエイドス・モントリオールのようにレイオフが進んだり、スタジオ閉鎖が進んでいるのが今の状況である。そういった中で、日本の開発環境であっても賃金の遅配が起こる程に苦しい業界というイメージがついてしまえば、ゲーム産業そのものが衰退しかねない。業界全体が余裕のある状態に戻る事がなによりも肝要だろう。

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。