Desktop Mateからお前の母ちゃんまで 令和にデスクトップマスコットブーム再燃か

伺かの画像

2025年12月26日にひっそりと、とあるゲームがリリースされている。当該作品はSteamウィンターセール終了後の2025年1月6日(日本時間)の検索欄クリック時に突如、最上段にセール表示とともに現れたのである。その名も「お前の母ちゃん」というゲームだ。

 タイトルを見て面食らったのも無理はない。ゲーム紹介も一行目から「お前の母ちゃんが来たぞ、早く一緒に楽しく遊ぼう。お前の母ちゃんはデスクトップシミュレーションゲームです。」という説明文からスタートしている。とはいえこの作品はいわゆるバカゲーであるとかそういったものではない。女性型の3Dモデルをデスクトップ画面に表示させて待機させるというデスクトップ常駐型のアプリケーション、いわゆるデスクトップマスコットに相当するソフトウェアだ。開発企業は同作だけをリリースしているMom Gameという所らしいが、その仔細は不明である。

 なおこのソフトウェア、ワークショップというメニューが実装されており、そこから様々な追加衣装へとチェンジする事が出来る。ただしこれがメーカー公式の衣装であるかは保証されていないため、その使用には注意が必要だ。また自分でVRMファイルを用意すれば、それを読み込ませる事も可能となっている。

 同作は日本時間1月6日にSNSで取り上げられて以降急速にユーザーが増えている。というのも、非公式データサイトSteamDBによればそれまで同時起動人数が30名前後で推移をしていた。しかし原稿執筆時点で1200人を超えるユーザーがアクセスを行っており、お値段もセール中で96円という破格の安さ。こういった影響から投げ銭的に同作を購入するユーザーが出ていると推測される。

 同じデスクトップマスコットとしては、2025年1月8日にインフィニットループよりリリースされた「Desktop Mate」も話題となっている。同タイトルはインフィニットループの看板キャラクター「あいえるたん」の3Dモデルをデスクトップ上に表示するアプリケーションであり、最低限の通知機能である「アラーム」が付いている。こちらはVOCALOIDの初音ミクやVOICEROIDの結月ゆかり、東方Projectの博麗霊夢といったキャラクターのライセンスモデルの購入も可能となっている。モデルによっては音声や独自モーションが付いていたりする。もちろん料金は2200円と、相応のコストであるため買い過ぎには要注意だ。

 他にも対話型AIによるテキストトーク機能を備えた「Deskie」「Vpet」といった類似のソフトウェアも続々とリリースされている。この令和の時代に、まさかのデスクトップマスコットが溢れる時代が来るとはそうそう予想出来るものではないだろう。

デスクトップマスコットの歴史

 この手のソフトウェアについては、実はその歴史は非常に古いものである。1998年10月にリリースされたフリーソフト「ペルソナウェアVer.0.91」が源流であり、「春菜」と呼ばれるキャラクターがデスクトップ上に表示され、設定された反応やそれに伴うテキスト会話を行うといったものであった。現在ではChararinaと名前を変えている同サービスだが、2000年よりバージョンアップに併せて有料化へと踏み切っている。

 ところが同年の2000年5月、同種の機能を持ったソフトウェア「偽ペルソナウェア with “偽春菜”」がリリースされる。同ソフトは各ニュースサイトの更新情報を自動的に監視・報告する「ヘッドラインセンサ」という、今で言う所のRSSフィードに近い機能を搭載しており、常駐させておくだけで簡単なニュースも見れてしまうという、当時としては優れた機能を持ったソフトウェアでもあった。その後同ソフトウェアはキャラクターの変更などの変遷の末2002年4月14日から「伺か(うかがか)」へと名称を変えている。

 この伺かの更新は2002年に停止しており、両ソフトウェアを構成する「MATERIA」というファイルと、その仕様との互換性も高いソフトウェア「SSP」が、2000年代のデスクトップマスコットソフトウェアとしてネット界隈では定番となっていたのである。なおこちらは2026年1月2日時点のソフトが最新版だ。これらのソフトは設定された会話を元に対応を行う、いわゆる「人工無脳」のソフトウェアとしても大きく注目を集めていた。

 その後は動画サイトの普及やスマートフォンによるソーシャルゲームの普及など、作業のお供に時間を潰せるコンテンツの多様化が進んだこともあって、デスクトップマスコットという存在はPCにおけるコンテンツとしての立ち位置を徐々に狭めていく事になってしまった。キャラクターのコアとなる動作ファイル「Ghost(ゴースト)」と外観ファイル「Shell(シェル)」の公開サイトもYahoo!ジオシティーズなどのサービス終了により、ネット上から散逸するケースも増えてきたのである。またYoutubeを中心に、いわゆるLo-Fi系のアニメーション長時間動画のような「アニメキャラと長時間作業できるコンテンツ」が増えた事も、一因として挙げられるだろう。

 そんな中で令和のこの時代に、Desktop Mateなどのソフトウェアや後発ソフトの流入により、改めてデスクトップマスコットというジャンルが話題となったのである。まさかのリバイバルブームとでも言うべきこの状況は、今後のコンテンツの展開の仕方にある程度の影響を与える可能性があると見て良いだろう。

1995年神戸生まれ。ゲーム記事エディター。国内メディアのゲーム・エンタメ記事編集者として5年勤務後、フリーライターとして複数のメディアで活躍。ビデオゲームの専門レビューや特集を中心にお届け。