昨年はゲームに関する様々な話題が飛び交う一年であったが、年末に差し掛かる時期に一つのレビューがSNSを中心に炎上を起こす事となった。IGN Japanが掲載するレビュー記事「【コラム】HD-2D版「ドラクエI&II」で感じた「メタル狩り」というゲームデザインの風化」がそれにあたる。本記事ではそもそもの問題点とされている要素、そしてゲームにおけるModの立ち位置について焦点を当ててみる事にしよう。

レビューのちぐはぐさは不評の元
今回話題となったのは、スクウェア・エニックスより発売された「ドラゴンクエストⅠ&Ⅱ」である。これはファミリーコンピュータでリリースされたRPG作品「ドラゴンクエスト」「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」を、ビジュアルや演出、システム面に手を加えたリメイク作品として、1つのソフトで2本のタイトルが遊べるようにまとめたものである。インターフェースも含め現代的なアレンジが随所に施されており、これに対しては賛否両論の声があるものの、作品自体の完成度の高さも相まってユーザーからは概ね好意的に受け取られているタイトルである。
さてそんな同作であるが、先述のIGN Japanのレビューの中でこんな記述が存在する。
「実際、筆者はこのメタル狩りが面倒で投げ出しそうになった。しかし、メタル系モンスターが逃げなくなるMODがあったのでなんとかクリアできた。
このMODは、メタル系モンスターの逃げる行動を通常攻撃に置き換える非常にシンプルな内容だった。しかしたったそれだけで苦痛が減り、投げ出す大きな要因がひとつ潰れたのである。逃げられるストレスが減れば、レベルが上がった喜びを感じやすい(もちろん劇的におもしろくなるわけではないが)。」
この一文を起点に、SNSを中心として当該コラム記事に対して激しい炎上が発生してしまったのである。
ドラゴンクエストをご存じないという読者の方向けに説明をすると、ドラゴンクエストシリーズに登場するモンスター(敵キャラクター)はそれぞれ経験値を持っており、プレイヤーキャラクターは獲得した経験値に応じてレベルアップを行い、段階的に強さが上がっていく。場合によっては魔法や特技といった役立つ技能も習得する事が可能だ。このレベルアップは高レベルになればなるほど時間の掛かる要素であり、ドラゴンクエストシリーズにおいては装備購入の為のゴールド稼ぎ共々反復要素として槍玉に上がるものであった。
そして登場するモンスターの中に、非常に高い確率で逃走するものの、撃破出来れば大量の経験値が手に入る「メタルスライム」というモンスターが存在する。後年多くの派生キャラクターが出てきており、同系列モンスターに対して効果的に体力を削れる技能や装備も出てくるほどに、同シリーズお馴染みの要素として定着している。このメタルスライムを狙って戦闘を繰り返す事を「メタル狩り」と呼ぶのである。
もちろんメタルスライムを狩って強くなるのは本作の醍醐味だが、このコラムの当該記述が荒れる要因となった要素は大きく2つある。1つはリメイク版では戦闘不能にならない「楽ちんプレイ」という難易度設定が可能な点だ。これはいつでも変更可能な難易度設定となっており、この楽ちんプレイに設定しているとプレイヤーキャラクターは一切戦闘不能になることがない。極端な話として、時間さえかければ全ての敵を倒してしまうことが可能な調整と言えるだろう。メタルスライムを倒すのが面倒であるならば、Modを使わずとも楽ちんプレイに設定しさえすれば良いのである。そしてもう一つの理由が、メーカー非公式のプログラムであるModの使用を行った上でゲームそのものの批評をメディアを使って行うという、ゲームメディアにあるまじき行為をしてしまっている点だ。
Modの歴史とその立ち位置
Modについて知らない読者の方に解説をすると、Modとはパソコンゲームを中心に提供される改造プログラムを指す。ゲーム内容を改変(Modification)する事からModと呼称されている。
昨今では多くのゲームでModが存在し、また改変要素として認知されている。日本においてModという要素が表舞台に立ち始めたのは、2005年6月7日発売のGrand Theft Auto:San Andreasや2006年3月20日発売のThe Elder Scrolls Ⅳ:Oblivion、2008年10月28日に発売されたFallout3の存在が大きく寄与している。それぞれの作品にModを使用したプレイ動画が投稿される事で、動画共有サイトを中心にModという要素がある事が日本のユーザーの間に知られるようになっていったのだ。一時期The Elder Scrolls V:Skyrimにて話題となった「ドラゴンをきかんしゃトーマスに置き換える」「月をニコラス・ケイジに置き換える」といった要素も実はModによるものである。


余談だが、大手のModプラットフォームとして機能しているサイトNexus Modsは、元を辿れば2001年に設立されたThe Elder Scrolls III: Morrowindのファンサイト「Morrowind Chronicles」が元となっている。そこからModホスティングサービスが追加され、TES Nexusなどへ名前を変更し、現在のNexus Modとなり多くのゲームのModを取り扱うサイトへと成長している。
Modはゲーム外から改造プログラムを導入し起動するものであるため、ゲーム内で設定されている要素を利用した「チートコマンド」「バグ技」「裏技」とは明確に異なる。平たく言えば、ゲームに対して仕様外の挙動を行わせる事を前提としている。往年のゲームプレイヤーには「プロアクションリプレイ」といって通じる層もいるだろう。
当然ながらこれによって変質したゲームは、改変前のゲームを指す用語である「バニラ」とは別の状態として見なされる。Modの中にはゲームバランスを変えるものも多く存在するため、Modを前提とした評価はゲームに対する評価として成立し得ないのである。
とはいえModもゲームの発展に対し寄与している実例は存在する。FPS作品であるHalf-Life2のModが競技性FPSの礎であるCounter-Strikeの発祥となり、リアル路線のFPSであるArma2のModから、ゾンビ系サバイバルゲームの金字塔となるDayZが生まれたという「ゲームからゲームを生み出す」事も起き得る為だ。また最近ではSteamにおけるSteam Workshopやベセスダ・ソフトワークス系ゲームにおけるCreation Clubの存在など、出来は良し悪しとしてもメーカーがMod使用を容認する流れも出来ているのである。
翻って、今回炎上したコラムはゲームをプレイするという事とModを利用するという事、その両面に喧嘩を売った結果となってしまった。ゲームを個人的に楽しむならばModの利用はやぶさかではないが、ゲームを見定めるならばまっさらなものでなければならない。それについていけないという状態になってしまった時が、コントローラーを置くときなのだろう。
