Amazon GamesとNCSOFTは11月18日、現在運営中のオンラインゲーム『スローン・アンド・リバティ』について、2025年12月4日のアップデートを最後に日本語音声への対応を打ち切ると発表した。それ以降については英語または韓国語音声でのプレイとなる。日本語対応については今後字幕表示のみとなる。
いつも『スローン・アンド・リバティ』を遊んでいただきありがとうございます。
— THRONE AND LIBERTY JP (@thronelibertyjp) November 17, 2025
2025年12月4日のアップデートをもちまして、日本語音声の収録を停止いたします。
今後のアップデート分に関しては、英語または韓国語音声・日本語字幕でお楽しみください。…
『スローン・アンド・リバティ』はギルド戦を中心としたMMORPG作品だ。同作はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|Sにおいてリリースされている。舞台はソリシウムと呼ばれる広大なオープンワールドであり、プレイヤーは最大で数千人規模になる大規模PvPバトルや、PvPvEのダンジョン攻略などに挑んでいく。ゲームとしてはソロプレイのほか、ギルドに参加して冒険することもできる様になっている。
主なコンテンツがPvPにおける大規模ギルド戦であり、現状PvE要素に関しては薄めのタイトルである同作。現在のSteamにおける評価は「賛否両論」とそこまで肯定意見が多いわけではない状況だ。やや苦しい中でサービスを続けている同作ではあるが、この度日本語音声に対して新規収録を行わない旨を発表した事で、日本のユーザーからは不満の声が聞かれている。
Steam ScoutというSteam上のレビューに対する国籍別分類を行えるサイトでは、日本語ユーザーは全体の0.9%となる579件のレビューを寄せている。全体のレビュー数がSteam公式上では66,693件と表示されておりややズレが発生しているものの、それでも1%に満たないプレイ人口となっている。もちろんこの数自体がプレイ人口の全体数や割合を的確に表したものではない。しかしNCSOFTの本拠地である韓国語やAmazonのサービスである以上英語対応は行われ続けるが、日本語ユーザーの少なさとそれに対して音声収録に関する手間やコストを考えた結果、対応を打ち切る形となったのだろう。本件に関しメーカー側からの仔細は出ていないが、恐らくはその辺りの理由であると考えられる。
日本語対応という要素に掛かるコストの重さ
別のゲームではあるが、最近話題となったソーシャルゲームの一つにアクション作品の「エーテルゲイザー」が挙げられる。本作は3人一組のユニットを操作するアクションゲームであるが、なんと11月4日のメンテナンスでPC版の日本語音声について、シナリオに関わる物をすべて削除するという対応を行っている。これは日本語でのアナウンスでは詳細が語られていなかったものの、韓国語版のアナウンスでは「ライセンス料の支払いによる問題」として記載があり、モバイル版とは別個に存在するPC版に対して該当の費用が支払われていないことに起因する問題となっている。
また同じくソーシャルゲームとしてリリースされているシミュレーションゲーム「カウンターサイド」については、NEXONによる運営から開発会社であるB Sideへと運営が移管された経緯を持つ。同作においては運営移管後に新規キャラクターの日本語音声の収録がされておらず、現在も韓国語音声のみが提供されている状況だ。元々日本でもサービスが継続しているタイトルであるだけに、この対応に日本のユーザーからは不満が上がっている。
ソーシャルゲームのPC対応版は最近多くリリースされているものの、すべてのタイトルがPC操作に最適化している訳ではない。またPCでの操作が結果的にモバイル版より煩雑であったり、グラフィック表現などでモバイル版よりも上のクオリティが担保されているかどうかという点においても必ずしもそうと言えるタイトルはそう多くない。今回日本語版のユーザーに対してこういった対応となったことは、開発やサービスの継続に掛かる費用の中で「日本語への対応」が真っ先に矢面に立たされる事を如実に表している。
そしてそれは何もソーシャルゲームだけではない。日本ファルコムがリリースしたRPG作品「英雄伝説 閃の軌跡」は発売当初日本語音声が収録されておらず、英語音声に日本語字幕での対応という形式で発売されたのである。国内で同作が発売された上でのSteam版の発売直後にこの様な対応が取られる事となり、ユーザーからはボイコットが起きる結果となった。その後2018年には日本語音声を追加するアップデートが施され、現在は日本語音声でプレイ可能となっている。これに関しては音声周りの権利料がネックとして存在していると担当者は語る。
なぜあえて日本語を抜くのかという話を目にしますが、一般的に一番コストがかかるのは音声の権利料と思います。転職後は全言語のローカライズコストを比較したりもしますが、権利料においては日本が群を抜いて高額です。もちろん、日本ではそれが正当な対価だと思いますが、本社の説得が中々大変です。
— 本間 覚(フォース) (@homma_force) June 28, 2017
更なる有名タイトルであってもこの状況は容易に発生する。コーエーテクモゲームスが2018年に売り出したSteam版「真・三國無双8」では日本語と中国語の字幕表示が選択出来ず、内部データにありながらも画面上に表示出来ないような設定が施されていた。その後なんとこの字幕に関する内部データをアップデートにより削除した事で、Steamのユーザーレビューが大荒れとなっていた。現在では日本語字幕にも対応を行ったものの、この不可解な対応で日本語字幕・音声を取り巻く環境はだいぶ複雑である事が消費者に伝わる結果となった。
音声の権利料(ライセンス料)や字幕のフォント料というのは決して安いものではない。特に商用として使われるものについては高めの設定となっており、グローバルな言語である英語と比べれば決して利用者が多いわけではない日本語に対して「コストを支払う」事に背を向ける企業が出つつある状況だ。願わくは「日本のユーザーに受けるゲームが、日本語でしっかり遊べる環境」を意識して作ってもらいたい所である。
