ソニーグループは2025年11月11日、「2025年度 第2四半期 連結業績概要」を発表した。対象となる期間は2025年9月30日に終了した3カ月間である。今回も同グループが扱う多様な事業の業績が注目されることとなったが、その中でもゲーム事業については営業利益ベースで13%の減益とかなり手痛い状況となっている。その流れについて追いかけて見てみる事にしよう。
CONCORDがもたらしたDestinyの行方
今回減益となったゲーム&ネットワークサービス分野(G&NS分野)について、決算発表資料では「営業利益は、増収の影響はあったものの、主に無形資産等の減損と過去の開発費資産計上額の修正による約498億円の⼀時的な損失計上により、前年同期⽐13%の減益となりました。なお、これらの⼀時要因を除いたベースでは23%の増益となります。」と述べられている。今後の見通しについても金額の変動が見られないため、予想されている300億円の赤字はそのまま解消されない形となる。

これについては明確にソニー側も述べており、「『Destiny2』については、競争環境の変化もあり、売上及びユーザーエンゲージメントの⽔準がBungie(Bungie,Inc.)買収時の想定に届いていません。引き続き改善に向けた努⼒は続けるものの、この度⼀旦事業計画を下⽅修正し、関連するBungieの⼀部資産の減損を計上しました。」と語っている。今回「反逆」アップデートを控えるDestiny2であるが、現在ユーザー数の減少に悩まされている同タイトルのもたらした影響は決して小さなものではない状況だ。Bungieは新作である『Marathon』の開発に注力しているが、その先行きも容易なものではない。現在FPSタイトルで新作として扱われているBattlefield6やCall of Duty:Black Ops7などは軒並み評価が低くなっており、AAA級のメジャータイトルに対し相次いで失望感が広まっている状況だ。そんな中でBungieがDestiny2を放り出して作った新作タイトルに対する評価はかなり逆風となる可能性は高い。
実際の所ソニーは多くのスタジオを買収し、ゲーム事業の枝葉を積極的に広げている。買収こそ行っていないが、Arrowhead Game Studiosが開発した『HELLDIVERS 2』は大ヒットを飛ばしている。また、Team ASOBIの開発した『ASTRO BOT』も大きな話題となり、同社におけるIPの取り扱いの上手さを見せつけた形となった。
しかしそういったプラス要素を吹き飛ばしてしまう逆風はもう一つ存在していたのだ。それがFirewalk Studiosが開発した『CONCORD』である。同作のリリースは2024年8月と比較的近傍であり、開発費の回収も済んでいない状況でありながら、2ヶ月でサービス終了となってしまっている。結果としてFirewalk Studiosも閉鎖となり、CONCORDのもたらした焦げ付きはソニーにとって想像以上の痛手となったのである。
先述したHELLDIVERS 2の様なライブゲーム型のコンテンツは当たれば確かに利益となり、ASTRO BOTの様なIPを上手く活用しデバイスの性能を存分に活かしたゲームを作るのであれば評価が高いのがソニーである。シングルプレイ向けタイトルでは『Death Stranding2:On the Beach』や『Ghost of Yōtei』が大健闘を見せている。そういった意味では良い作品を作るスタジオも傘下に擁しているパブリッシャーであるのだろう。しかしライブゲームの様な「長期間追い続ける必要がある、ソーシャルゲームではない据え置き型のハードを対象としたコンテンツ」に対して、集金体制の粗さが見える事も相まってユーザー側からは現状あまり求められていない状況である。
今後のソニーの行方はどうなるのか
先述したDeathStranding2やGhost of Yōteiといったタイトルもそうであり、ASTRO BOTもそうであるが、自社の技術力をフルに活用した「丁寧なゲーム」を作らせる事にかけては右に出るものはいないだろう。
過去作品ではあるがGRAVITY DAZEシリーズの様なハードの機能を活かした魅力的なタイトルもそうであるし、更に遡ればがんばれ森川くん2号の様な実験作ですら良しとしている。ゲーマーの中には未だにパラッパラッパーを愛好する者もいるのである。携帯ハードではあるがPlayStation Portableの「勇者のくせになまいきだ。」シリーズも大いに話題を掻っ攫った過去もあるのだ。そういった「ソニーだからこそ作れてきたもの、大事に出来るもの」を大切に取り扱う事こそ、今後の同社のゲーム事業の舵取りに求められるものかもしれない。
