インディーズゲームとして売り出されたタイトルがメジャーなパブリッシャーのタイトルと並ぶ事が出来るのは、ゲーム販売プラットフォームによる配信が当たり前になったからこその市場変化であると言える。そしてそこにおいて比較されるのは、ゲームそのものの話題性と出来の良さだ。本質的に「面白い」ゲームであればユーザーは高評価を下すし、値段以上に求められているゲーム性に合致した作品であれば良い口コミも広がっていく。
タルコフライクの作品として一躍話題となった「エスケープ フロム ダッコフ」について、Team Sodaが運営するXアカウントから「売上本数が100万本を突破した」という旨の報告が10月23日に行われた。同作は「PVE見下ろし型脱出シューター」とジャンルが定義されている作品であり、先述したタルコフライクーーEscape from Tarkovと同じ流れを組む脱出型のシューティングゲームとなっている。
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本作は名前にダックとつく通り、主人公はアヒルである。そして敵も味方も可愛らしいキャラクターデザインながら、その難易度はかなりシビア。プレイヤーが任意で難易度を変更する事も出来るが、見下ろし型の2Dシューターながらヘッドショットなどの要素も備えつつ、適度な緊張感を保ったゲームプレイが可能との事。
事前に告知されていたタルコフライクながらも2Dシューティングであるという前評判を背負った同作は、発売後に初日に20万本、3日で50万本の売上を達成している。そして発売一週間で100万本の売上を記録する事となった、シンデレラ・ストーリーの様な展開をたどるゲームとなっているのである。
非公式データベースサイトGamalyticのデータではあるが、100万本を売り上げたソフトウェアとしてはオープンワールドFPSゲーム「RAGE」やソビエトライクな世界観の「Atomic Heart」、オープンワールドRPGとしてのスピンオフ作品「グランブルーファンタジー:リリンク」やポップなお手軽音ゲー旋風を起こした「Muse Dash」、他にも「Sifu」や「Battletech」など、ゲームをやり込んでいるユーザーならば一度は目にしたことのあるようなタイトルがちらほらと見えてくるほどだ。なおモンスターハンターライズ:サンブレイクの体験版についても100万本がSteamでダウンロードされている。
ここまで販売本数が多いとその評価が気になるところではあるが、現在同作のSteamにおける評価は全言語レビューで96%が好評を下す「圧倒的に好評」となっている。日本語レビューも95%が好評を下した「非常に好評」の評価であり、ここまで好評率が高いインディーズゲームはそう多くない。パブリッシャーは中国大手の総合配信サービス事業者のbilibiliである事を差し引いても、事前に寄せられた期待以上の作品をユーザーに向けて提供したTeam Sodaの開発力は流石と言うべきだろう。Team SodaはSoda Crisisという横スクロールアクションゲームもリリースしており、評価は高いもののGamalyticのデータでは少なく見積もってもおおよそ8万5千本と、そこまでのメガヒットには恵まれていなかったようである。その経緯から見ても、今回の売上本数の多さは同チームにとって大きな後押しとなったに違いない。
エスケープ フロム ダッコフは10月31日までリリース記念セールを実施しており、10月31日まで1,584円で購入する事が可能となっている。この機会にぜひ手を取ってみてはいかがだろうか。
突然の解任人事とゲーム開発の難しさ
他方で暗いニュースも週半ばに飛び込んできている。Remedy Entertainmentは10月22日、同社のCEOを務めていたTero Virtala氏が辞任することを投資家向けに発表。併せてRemedyの共同設立者兼最高製品責任者であるMarkus Mäki氏が、10月22日付けで暫定CEOに就任するとの事である。新規CEO就任まではこの体制が続くとの事である。

今回の突然の辞任についての詳細は明らかになっていないが、今年6月に発表した「FBC: Firebreak」について、Gamalyticのデータでは36,000本程の売上本数となっている。Steamでのユーザーからの評価も賛否両論となっており、マーケティングにおいて苦戦を強いられる状況にあったのだろう。「Alan Wake」や「Control」、「Quantum Break」といったミリオンヒットを飛ばすデベロッパーである同社だが、それ故に後継作には恵まれていない状況が浮き彫りになった形とも取れる。
一方でメガヒットを飛ばす作品が生まれ、もう一方では往年のヒットメーカーの不振から経営陣の交代劇が起こる。華やかさと儚さが同居する雰囲気こそが、スクラップ・アンド・ビルドを旨とするゲーム業界の醍醐味であるのかもしれない。
