AWS停止で各種オンラインサービスが一時不通に、任天堂などにも大きな影響を及ぼす

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 クラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」の米国東部リージョン(US-EAST-1)で、10月20日午後4時ごろ(日本時間)から障害が発生。データベースサービス「Amazon DynamoDB」が停止した他、監視ツール「Amazon CloudWatch」など20のサービスでエラー率やレイテンシが増加した。その後不良が発生したサービス数は更に増加。突然の事態に対する影響は非常に大きく、任天堂やフロム・ソフトウェア、株式会社ラセングル(Fate/Grand Order運営元)、VR対応オンラインSNS VRChatの運営チームなどが相次いでXへの投稿で問題発生を通知。

 米国太平洋時間10月20日午後3時53分(日本時間21日午前7時53分)には、Amazonはこの大規模な問題が解消したと発表した。障害は米国時間の19日午後11時49分に始まり、米国東海岸のサービスでエラー率の上昇が見られたという。Amazonは20日午前0時26分にエラーの原因を特定し、リージョン内の「DynamoDB」サービスエンドポイントにおけるDNS解決の問題が原因だとした。記事執筆時点で障害は既に解消されているが、ゲーム業界のみならずクラウドサービスを利用する多くの企業に多大な損害をもたらした。

オンラインサービスを利用するが故の弊害

 AWSはAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービスであり、このサービスを利用している事業者は多岐に渡る。現在そのシェアは全クラウドサービスのうち30%程になるとも言われている大規模事業であるが、それ故に今回のサービスの一時的な中断は利用者にとって大きなダメージとなった。同サービスはAI(機械学習)やIoT、ブロックチェーンといった領域にも利用されているが故に、特にブロックチェーン技術を用いる仮想通貨界隈にはダメージが大きいとの懸念も示されている。

 ゲームについても最近はオンライン対応のソフトウェアが当たり前のように出ており、常時通信型のゲームでなくとも定期的な通信を挟む事は珍しい事ではなくなった。セーブデータをクラウドサーバー上に保存する機能を持つゲームも増える中で、クラウドサーバーのダウンはかなりの痛手となる。

 今回ゲームの大規模イベントとバッティングする様な報告はまだ見受けられないが、例えば競技性の高いオンライン対戦型のFPSやMOBA系タイトルなど、リアルタイム通信を行うタイトルについてはこの手のトラブルが発生した場合に早急な対処が求められる。オンライン環境での通信対戦を主軸としていた場合は、イベントの中止もあり得る話である。そういったゲームプレイ以外の領域にも与える影響は無視できない。

メーカー側が取れる対策とゲームの今後

 対戦系ゲームなどでは、公式大会などを開催するに際し、こういったトラブルを防ぐため選手が会場に集まり競技を行う事が多い。完全オフラインでプレイできる場合でなくとも、1会場内の通信でソフトウェアが動作できるように調整出来ればプレイが中断する事は無いからだ。

 もっと現実的な方法としては、完全オフラインプレイが可能であり、オンライン側のセーブデータを引き継いでゲームをプレイする事が出来る方式だ。Steamなどで用いられているクラウドセーブとオフラインセーブの間の上書き確認などがその典型例であり、オフラインで継続してプレイした内容がクラウドセーブ側へ反映できるタイトルは多い。急なネットワーク障害であっても、その手のタイトルであればプレイは継続しやすいだろう。

 とはいえ対戦型コンテンツを主軸とするゲームやオンラインゲームにおいては、継続的な通信は必要不可欠である。またモバイルコンテンツも大半のゲームアプリは通信を挟むため、この市場においては完全オフライン化可能なアプリは驚くほどに少数だ。運営側としては、この手のトラブルが発生した際に別のクラウドサービスへ即座に乗り換えられる様な姿勢や、データバックアップを積極的に行い、プレイヤー側の損をできるだけ招かない工夫が求められていくだろう。

 だがそれでもこういったトラブルを未然に察知する事は、現状不可能に近い。オンラインによる通信環境が最早ゲームと切っても切れないものになってしまっている以上、この手のトラブルに当たってしまった際はその不運を嘆き、一刻も早い問題解消を祈るのが最良と言えなくもないだろう。

1995年名古屋生まれ。Eスポーツニュースエディター。Eスポーツ専門雑誌の記者として5年勤務後、独立。国内外のEスポーツ業界の最新ニュースや特集記事をお届け。