Ubisoftは10月17日、『The Crew』シリーズの最新情報を発表する番組「The Crew Showcase2025」を配信。あわせて『The Crew2』に向けて、部分的にオフラインでのゲームプレイが可能となる「ハイブリッドモード」を実装したと発表した。本記事ではオンラインとオフラインの違いを交えつつ、プレイフィールや背景事情も含めて説明していくとしよう。
全米を踏破できるオンラインレースゲーム
The Crew2は北米全土を舞台に、自動車やバイクはもちろん、モーターボートや軽飛行機によるエアレースなど多彩なレース・競技系コンテンツを備えたオープンワールドレースゲームである。北米全土という触れ込みは伊達ではなく、北西のシアトルから南東のフロリダまでを縦横無尽にひた走る事が出来る。加えておおよその大都市などは道路も含めてある程度再現がなされているという、ややリアル寄りのドライブシミュレーターとしても評価が高い。
プレイヤーが属する事が出来るグループは4つあり、そのいずれもがストリート走行用の自動車やドラッグレースマシン、オフロード対応バイクやエアレース用の飛行機、モンスタートラックにレーシングマシンと様々な乗り物を扱っている。各レースには対応する乗り物のカテゴリーが設定されており、ストリートレースであればストリートレースカテゴリーの車でないとエントリーが出来ない。そのため、高級な車両を扱うハイパーカーやアルファワン・グランプリといった舞台へのエントリーは必然的に「他のドライビングを習熟してから」というやや難易度の高い種目に設定されている。

本作はオンラインと名のつく通りオンラインランキングイベント「LIVE SUMMIT」が恒常的に開催されており、一週間ペースで設定されたお題に沿って幾つもの種目をこなし、総合スコアで最終的な順位が決まる。順位に沿ってブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナといったランク付けがされており、最低でもエントリーし種目を一つでもこなせばブロンズランクの報酬が貰えるという仕組みだ。プレイ時間に対して割りのいい報酬が多いが、限定車両での出走を行う項目もあり、そのためには多額のゲーム内通貨かCC(クルークレジット)という課金通貨を使う事になる。バラバラに購入するよりはまとまったバンドルで購入する方が安い事もあるため、ユーザーにとっては悩みの種である。
またオンライン状態では他のプレイヤーとも遭遇することがあり、お互いにエモートを送り合ったり、あるいは気軽にランデブーと洒落込む事も出来る。もしくはお互いに「クルー」を組んで、共同でオンライン対戦コンテンツに挑んでも良い。
車両は手に入れたいけれどレースが得意でないというユーザー向けに、アメリカ全土を手がかりを見つけて走り回る「STORY」というイベントも実装されており、手に入る車は物によっては一癖二癖ある操作性をしているが、それでも珠玉の車両が多い。日産の300ZX(日本ではフェアレディZ 300)やラリーカーではないストリートレース仕様のGTOなどはこのイベントでしか手に入らない貴重な車両だ。

全米を観光しても良いし、レースに挑んでどんどんとマシンを強化しても良い。レースに勝ち続ければ、カテゴリーの現チャンピオンからも注目される立場となってくる。主人公が成長し注目されるレベルは「アイコン」として表され、一定値になるとボーナスで車両がもらえてしまうという「成長する事を前提としたコンテンツ作り」となっている。
オフラインモードでは先述したSUMMITなどのオンライン要素が消え、課金要素もオンラインからの引き継ぎしか出来ないが、様々な地点でAIドライバーたちが腕を競っているのを見る事が出来る。
サービスの継続とThe Crewの死
さてここまで書いて「なぜThe Crew2しか配信されていないのか?」と思うユーザーもいるだろう。それには前作The Crewの顛末とライブサービス型コンテンツの難しい事情が絡んでいる。
The Crewは2と同じく米国全土を舞台にしたオンラインレースゲームであり、ストーリーはほぼ無いに等しい2とは違い「5-10レーシングチーム」を巡るハードなドラマが展開される。使用可能な車両は自動車のみ、後々DLCにてバイクが追加されたがその種類はThe Crew2には遠く及ばない。またゲームシステムも大きく違っており、プレイヤーが所属できる組織(ファクション)に設定された名声値を上昇させる必要があり、それによってストーリーが解放されていくなどレースゲームというよりはアドベンチャーゲームの様な要素が多い作品でもあった。
このゲームもオンライン対応であり、継続的なサービスが行われていた。しかし2023年12月14日、UbisoftはThe Crewとそのダウンロードコンテンツの配信、ゲーム内コンテンツの販売を停止し、「今後のサーバーインフラとライセンスの制約」を理由に2024年3月31日にゲームのサーバーを停止すると発表した。次いで2024年4月上旬、Ubisoftは返金やゲームファイルのダウンロード方法を提供することをせず、The Crewを購入したプレイヤーからのライセンスを剥奪しプレイ不可となる対応を取った。これに対してユーザー側からは非常に厳しい姿勢での追求がなされ、一部のユーザーは”Stop Killing Game”という団体を立ち上げた。その後フランスの競争・消費・詐欺抑圧総局(DGCCRF)に苦情を申し立て、ザ・クルーを含む販売されたビデオゲームがプレイできなくなることに対処するようプレイヤーに呼びかける動きがなされるまでに至ったのである。
これを受けてか、今回のThe Crew2やThe Crew:Motorfestについて「ハイブリッドモードの搭載や検討」が行われた可能性は高い。ライブサービス型ゲームの完全オフライン化について、今後同社はどのように考えていくのかという一例を示したものと思われる。ただし一つ付け加えるならば、オンライン版の楽しさがあって初めて成立するゲームであった場合、完全オフライン化がゲームをどのように陳腐化させてしまうのかという懸念についてもメーカーは検討するべきだろう。少なくともThe Crew2についてはオンライン限定でなければ手に入らない車両がかなりの数あるのだから。
